2016年5月 2日 (月)

糖尿病による認知症(糖尿病性認知症)

認知症の原因で最も多いのは、アルツハイマー病ですが、最近では糖尿病に関連した認知症が注目されています。

糖尿病の患者さんはアルツハイマー病を発症しやすいということは、以前から言われていましたが、糖尿病の患者さんのなかに、アルツハイマー病ではないと考えられる認知症を発症をする可能性があることが分かってきました。


これを糖尿病性認知症と最近呼び始めています。


糖尿病性認知症は、アルツハイマー病と比較して、記憶が保たれやすいが注意力が低い、進行は遅いなどの特徴があります。


検査においても、海馬の萎縮が目立たない、アミロイド(アルツハイマー病の原因物質)が脳に蓄積していない、といった特徴があります。


糖尿病性認知症と考えられる患者さんは、血糖値が高いことが多いのですが、血糖を適切な値にすることによって認知機能のある程度の改善が見込まれます。


ただし、低血糖になると、脳細胞が障害されてしまうため、かえって認知症を進行させてしまう危険性がありますので、血糖値を下げるときは慎重に行う必要があります。


出典
羽生 春夫, 深澤 雷太.(2014).尿病性認知症.日本内科学会雑誌  103:1831~1838.

2016年2月15日 (月)

認知機能評価には長谷川式やMMSEだけでなく、日常生活の変化も大切。

もの忘れについて少し興味があるという方は、長谷川式やMMSEといった、簡易的なもの忘れの評価法を知っている方も少なくありません。

 

この二つの検査は、国内で広く使われており、若干の違いはありますがおおむね同じ検査です。

 

脳の様々な機能が評価できますが、コンパクトで短時間ですむという特徴があり、日常の診療でも良く使われています。

 

しかし、外来診療を行っていると、MMSEの点数は低下していないけれど、以前より認知症が進行したと感じる介護者の方が比較的良くみられます。

 

特に多いのが、テレビのリモコンや家電の使い方が分からなくなったとか、切符の買い方が分からなくなったけれど、点数は下がっていないという例です。

 

私は、MMSEに複雑なものの使い方を評価する項目がなく、うまく認知機能を反映できないために、このような乖離が起こるのではないかと考えています。

 

そのため、私は外来でMMSEを行った後に、介護者の方に日常生活で出来なくなったことが増えていないか尋ねるようにし、検査で反映されない部分を補っています。

 

もし、これらの簡易的な認知機能テストであまり点数の低下がなくても、違和感を感じることがあれば、いつからどんなことができなくなったか記録しておくと、認知症の進行の評価に役立つと思います。

MMSEについてはこちらを参照してください。

2016年1月21日 (木)

アルツハイマー病と喫煙

喫煙が健康に良くないということは、いまさら説明する必要のないことですが、認知機能にとっても良くないということが言われています。

かつて、喫煙はアルツハイマー病を予防するという論文が出されたこともあり、喫煙の数少ない利点だとされたこともありましたが、近年の研究では否定されています。

古い報告ですが(Lancet. 1998 Jun 20;351(9119):1840-3.)、これによると喫煙によってアルツハイマー病になるリスクは2倍程度になるといわれています。

また、喫煙は動脈硬化のリスクにもなるため、脳梗塞によって認知症になる危険性も増加するのではないかと思われます。

認知症予防のために、喫煙者の方は禁煙をお勧めします。


ただ、禁煙の成功率は低く、自力での成功率は10%を切るとも言われています(1年間の禁煙)。

現在は、保険診療で禁煙治療を受けることも可能ですので(当院でもできます)、禁煙補助薬を飲みながら禁煙する方が現実的かもしれません。

2015年11月10日 (火)

認知症患者さんが怒りっぽい BPSDへの対策

認知症患者さんが怒りっぽい、大騒ぎをするから、何とかしてほしい。

というご家族からの訴えは大変多くみられます。

認知症に伴って出現したこれらの問題行動はBPSDと言われています。


聞き流すことの大切さ

でも、書きましたが、BPSD(問題行動)は対応方法によって改善することが比較的多くみられます。



私見ですが、BPSD(問題行動)への対応方法は、2種類に分けられると考えています。

①薬物療養

②介護者の対応改善


です。


どちらかだけでもうまくいくこともありますが、どちらも必要であることが多い様です。



①薬物療法について

認知症の治療薬であるメマンチン(メマリー)や、抗精神病薬(リスパダール、セロクエルなど)、抑肝散(漢方薬)などにより改善が見られます。

副作用が少ない順でいくと、抑肝散→メマンチン→抗精神病薬の順となりますが、効果はその逆となります。

実際のところ、抑肝散だけで改善することは少なく、メマンチンを使ってみて、不十分であれば抑肝散を併用するか、症状が強ければ抗精神病薬を用いることになります。

副作用の観点から、抗精神病薬はできるだけ用いたくはないのですが、

介護負担を軽減することも認知症治療の一環


であると考えているので、介護者の負担度合いを聞きながら、必要に応じて投与します。

ただし、薬物療法だけで症状を完全にコントロールすることは困難です。



②介護者の対応改善

よくある事ですが、物忘れによって同じことを何度も言う、同じ失敗をするなどの問題が出現すると、介護者はそれについて注意して改善を求めようとします。

しかし、認知機能が低下しているために、患者さんは改善することができません。

すると、

失敗する

注意される

患者さんが嫌な気持ちになる

注意された内容は覚えていないけれど、イライラだけは残る

喧嘩になる

ということが起こります。

この流れを断ち切れる場所が一か所だけあります。

それは、

失敗する

注意される

患者さんが嫌な気持ちになる

注意された内容は覚えていないけれど、イライラだけは残る

喧嘩になる

注意されなければいいわけです。

注意されなければいいというのは、注意されないように患者さんが気を付けるという意味ではありません。

注意したくなっても、注意しないのです。

ちなみに、注意しても注意された内容は忘れてしまうので、あまり効果はありません。

もし、効果があれば、同じことを何度も注意する事にはならないはずです。


さて、「注意することをこらえる方法」について、お話します。


まず、注意したとしても、それが実ることは殆どないということを覚えておいてください。

認知症患者さんは、残念ながら認知機能は日を経るごとに低下していきます。

ということは、


今日より認知機能が良い日は来ない


ということです。

ですから、出来ないことや失敗について、注意を促しても、実らないどころか注意を促さなければならない場面がどんどん増えていきます。

ですから、


『出来ないことを注意する』⇒『できる事をほめる』


という発想の転換が必要になります。

そして、出来ないことをやらせるのではなく、できる事をやってもらうようにします。


同じことを何度も言う、間違ったことや勘違いをすることについてですが、悪い言い方になりますが、まともに聞いてはいけません。

真面目に聞くと、うんざりしたり、訂正したくなるのが心情です。

ですから、


ちゃんと聞いているふりをして、適当に聞き流してしまうことも必要です。


間違ったことや勘違いについても、よほど害がない限り、訂正する必要はありません。

ベテランになると、昔の自慢話などを上手に引き出して、気分よく喋らせることができるようになることもあるようです。もはや達人の域ですね。

ただ、介護者だって人間なので、我慢の限界というものがあります。


介護者が上手に対応するためには余裕が必要です。


その余裕を作り出すために、日中預かってくれるデイサービスや、短期の宿泊サービスであるショートステイなどを利用するのも大切です。

また、薬の力を借りることも大切な方法です。

夜、起きだしてきて困るので、寝る前だけ薬を使って介護負担の軽減を行うこともありますし、もっと激しい場合には日中から薬を使うこともあります。

薬によって完璧にコントロールすることは不可能ですが、症状を緩和することによって介護負担を軽減することは可能です。


介護負担が大きいと思ったら、主治医やケアマネージャーに相談すると、解決の糸口が見つかるかもしれません。

http://kumeiin.jp/

2015年10月27日 (火)

アルツハイマー病の自覚症状

アルツハイマー病患者さんに、「ものわすれの自覚症状はない」とされています。


実際に、ある程度進行した患者さんでは、自覚症状は乏しいと思われますし、アルツハイマー病発症の2~3年前から、自覚症状がなくなるという報告もあります。
(Robert S Wilson, Patricia A Boyle, Lei Yu, et al. Temporal course and pathologic basis of unawareness of memory loss in dementia.Neurology. 2015 Aug 26; pii: 10.1212/WNL.0000000000001935.)

また、自身の経験からも、アルツハイマー病に自覚症状がないとするのは、おおむね正しいと考えられます。


しかし、ここからは私見ですが、物忘れの自覚症状があるからアルツハイマー病ではないとするのは、正しくないのではと思います。



経験した中にこんな患者さんがいました。




家族も本人も、もの忘れが気になって受診しました。

確かに軽い物忘れがありましたし、正常とするに不安が残ったために、精密検査を行いました。

脳のMRIでは軽度ですが海馬の萎縮があり、脳血流シンチグラフィではアルツハイマー病に特徴的な血流の低下が認められました。

診断として、軽度認知障害(MCI)とするのですが、実際にはアルツハイマー病のごく初期であると考えられました。




「私は、物忘れがある」ということを数年前から訴えていたとのことです。

受診時にも、「もの忘れくらいありますよ」という具合でした。

実際に明らかな認知機能の低下が認められ、アルツハイマー病と診断できました。

1年2年とたつごとに、認知機能の低下は目立ってきましたが、本人の「もの忘れはある」という訴えは変わりませんでした。

しかし、よくよくみてみると、その訴えに深刻さはなく、患者さん本人は、本当にそれで困っているという様子はありませんでした。



①の患者さんは、病状がきわめて軽かったために、物忘れの自覚があったと考えられます。

この時点で来院され、治療が開始できたのは、認知機能の維持を行う上で良かったと考えられました。



②の患者さんは、実際には自覚はなく、ただ、口癖のように「もの忘れはある」と言っていたようでした。

訴えに深刻さがなく、物忘れによって困った場面を具体的に挙げられなかった
ところからも、そう考えられました。



アルツハイマー病には自覚症状がないというのは、大筋では正しいですが、これらの経験から、自覚症状がないからアルツハイマー病ではないとするのは少々危険なのではないかと思います。

2015年9月24日 (木)

おとなしいせん妄にご注意を

せん妄というと、わけもわからず大騒ぎするという印象をお持ちの方も多いと思います。

実際、それは間違ってはいないのですが、逆におとなしくなってしまうせん妄もあります

せん妄についてはこちらも参照してください。


せん妄というのは、ひどく寝ぼけた状態に近いと思っていただければよいと思います。

多くは、入院することによって引き起こされ、大騒ぎをしたり、点滴を引き抜いたり、暴力的になったりすることが多いです。

しかし、なかにはボーっとして、反応が乏しくなったり、無気力になったりということもあります。


こういったおとなしいせん妄は、一見せん妄に見えないので、入院してずいぶんおとなしくなったなという程度にしか思われないことも多い様です。

しかし、そのまま放置しておくと、ご飯を食べなかったり、リハビリが上手くできなかったりと、やはり寝たきりの危険性が高くなります。

ですから、入院して、ずいぶんおとなしくなった、無口になった、気力がなくなったなんていうことがあったら、せん妄になっている可能性を考えてみてください。

2015年9月11日 (金)

MRIでは認知症の発症予測はできない。

認知症を診断するために、頭部のMRIを行うことはほぼ必須であるといえます。

 

認知症の最大の原因であるアルツハイマー病患者さんでは、海馬の萎縮が目立つため、MRIで萎縮の有無を確認します。

 

脳血管性認知症であれば、脳梗塞があるため、これもMRIでよくわかります。

 

頭部MRIが、認知症を発症している患者さんにとって有用であることは、疑いの余地はないと思います。

 

では、発症予測という意味ではどうでしょうか。

 

フランスで行われた研究についてご紹介します。

 

1721人の認知症でない人にMRIを行い、さらに10年間追跡して、その間に認知症を発症したか調べた研究があります。

 

この研究では、認知症発症前のMRI画像を、統計的に解析しています。

 

アルツハイマー病でみられる海馬の萎縮についても検討されています。

 

しかし、残念ながら、認知症発症前に行われたMRIをもとに、10年のうちに認知症を発症するかどうかを予測することはできませんでした

 

Stephan, B. C. Tzourio, C. Auriacombe, S. et al. Usefulness of data from magnetic resonance imaging to improve prediction of dementia: population based cohort study. BMJ 2015;350:h2863

 

やっぱりそうだろうなというのが、率直な感想です。

 

アルツハイマー病に限って言えば、海馬の萎縮が目立つのは、認知症発症の時期とほぼ一致しているという印象です。

 

もし、発症を予測するのであれば、アミロイドβ(Aβ)を検出する検査の方が、おそらく有用であると思われます。
(アルツハイマー病の脳の変化は発症20年前から)

2015年8月 8日 (土)

日本一の花火

8月2日と3日に、新潟県長岡市で花火大会が催されました。

日本一の規模とのことで、せっかく長岡に転勤になっておりますので、私も少し離れたところから見物しておりました。

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写真の通りの見事な花火で、確かにこれは日本一だと納得致しました。


長岡花火は三尺玉という、非常に大きな花火が上がることで有名なのですが、三尺玉が上がる前に、空襲警報がなります。

というのも、長岡では空襲によって、1,476人の方がなくなられたのですが、この慰霊のために花火が始まったためです。

ですから、長岡花火の日にちは、曜日に関係なく、2日と3日に行われるのです。



普段は穏やかな長岡の町も、この日は新宿や表参道に負けない人ごみになります。

ですが、この花火、一度は見ておいて損はないと思いますよ。

2015年8月 7日 (金)

アルツハイマー病の脳の変化は発症20年前から

認知症の原因の半数以上を占めるといわれるアルツハイマー病ですが、この病気は脳の中にアミロイドベータ(Aβ)という物質が蓄積することが原因の一つであるといわれています。

Aβは脳細胞を障害する作用があり、これによって脳細胞が変性し(神経原線維変化)、アルツハイマー病を発症すると考えられています。

このAβはアルツハイマー病発症の20年前頃より蓄積が始まるといわれています。

遅れること10年ほどで、神経原線維変化が始まるといわれています。

神経原線維変化が始まった後、アルツハイマー病の特徴である海馬の萎縮が始まり、認知機能の低下が徐々に認められます。

海馬萎縮が顕著になるころに、認知機能の低下が著しくなり、アルツハイマー病を発症します。


アルツハイマー病で病院を受診するのは、アルツハイマー病という病気が完成してからということになります。


現在、アルツハイマー病の治療薬として用いることのできる薬は、いずれも症状を緩和するもので、アルツハイマー病の原因を食い止めたり、改善したりするものではありません。

何とか進行を少しでも遅らせるための治療しかないということです。


これに対して、Aβに対するワクチンなどの研究がおこなわれており、アルツハイマー病を根本から治そうという試みはありますが、まだ実用化されてはいません。


どのようにしたらAβが蓄積しないようにできるのか、はっきりしたことは分かっていませんが、微小な炎症などがかかわっている可能性が示唆されています。

また、高齢者の認知症はアルツハイマー病単独ではなく、微小な脳梗塞を合併していることが多いため、一般的に生活習慣病を予防するための食生活が有効かもしれません。

アルツハイマー病になるリスクを少しでも下げたいとお考えであれば、50歳くらいから食事や運動に気を付ける必要があると考えられます。

2015年7月23日 (木)

熱中症にご注意

暑い日が続いていますね。

梅雨明けと同時に熱中症になる患者さんが急増します。

若い方の熱中症と違い、高齢者の熱中症は、半分以上が室内(家)で起こっているといわれています。


高齢者は、加齢による影響で暑さを感じにくいと言われています。

また、発汗する能力も低下しているため、若い人より熱中症にかかりやすくなっています。

喉の渇きも感じにくいため、脱水傾向になっていても水を飲まないこともあります。


さらに、認知症があると、これらの感覚の低下が著しく、さらに適切な服を選ぶこともできず、夏なのに厚着をしていることもあります。


熱中症対策として風通しを良くするというのがありますが、都市部では不十分な印象があります。

というのも、窓は開けていたけれど熱中症になったという患者さんは珍しくないからです。


電気代はかかりますが、エアコンの力を借りるのが現実的ではないかと思います。

室温は26~27度くらいでしょうか。


水分補給については、高齢者は喉が渇きにくいので、喉の渇きと関係なく定期的に飲むというのも方法です。


尿の色がいつもより濃ければすでに脱水傾向がありますから要注意です。

逆に薄ければ水のとりすぎになります。


時々、水のとりすぎによる低ナトリウム血症(体の塩が不足する)で意識障害やけいれんを起こすことがありますので、注意してください。


それに、お部屋に温度計と湿度計をおくことをお勧めします。

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