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2015年4月30日 (木)

受診したがらないときには

認知症外来へ受診するときに、患者さんご本人を連れて行くのが大変という声をしばしば耳にします。

アルツハイマー病をはじめ、多くの認知症には自覚症状というものがありません。

例えば風邪をひいたら熱が出たとか、のどが痛いという自分にわかる症状がでます。

しかし、アルツハイマー病の場合、物忘れをしている自覚はありません(厳密に言うと、ごく初期には自覚があるようです)。

ですので、患者さん本人は病院へ行って検査をしなければいけない理由がわかりません。

多くの方は、少し物忘れがあるから検査したいとか、家族に言われたので検査しますという様に、検査に対して強い抵抗はないのですが、一部(といっても決して少なくない)の患者さんは、かたくなに受診や検査を拒否されます。

こういった方は、経験上、男性のほうが多いでしょうか。


さて、こういう場合にどうしたらいいか。

結論から言うと、どんな時にでもつかえる万能な手段はありません。
時と場合に応じた臨機応変な対応が必要です。


では、臨機応変に対応するためのヒントをお教えしましょう。

大原則として、患者さん本人のプライドを傷つけないようにしましょう。

一番よくないのは、物忘れを指摘して、認知症なんだから検査しなきゃ!というパターン。

これをやってしまうと、自覚症状のない患者さんは、プライドを傷つけられ、私は認知症じゃない!と反発してしまいます。


では、どうするか。

例えば、「物忘れを予防するための検査」というように伝えてみるのは手です。
私の個人的リサーチによると、高齢患者さんのもっともなりたくない病気ナンバーワンは、癌ではなく、今や認知症です。
それを予防できるのなら!ということになるわけです。

他には、「脳梗塞や動脈瘤、糖尿病などの生活習慣病を調べる脳と体の健康診断」というのはいかがでしょうか。
実際に、物忘れの検査をおこなって、初めていろいろな病気が隠れていたことがわかったなんてことは日常茶飯事です。

それでもダメなときは、奥様(ご主人)と一緒に受診するのも良くある方法です。

もし、信頼するかかりつけ医がいるのであれば、説得してもらうのも一つの方法です。

どの方法も完璧ではありませんが、うまく対処すると受診してくれる可能性は高まります。


しつこいですが、最後にもう一度。

『患者さん本人のプライドを傷つけないようにしましょう』

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2015年4月29日 (水)

認知症の検査② 神経心理検査

今回は、神経心理検査のうちMMSEについて解説します。

MMSEとは、Mini Mental State Examination の略で、長谷川式と並んで、認知症を調べるのに大変よく用いられます。

項目は以下の通りとなります。
_____________________________

・日時(各1点):時間の見当識を評価
  今年は何年ですか。
    いまの季節は何ですか。
    今日は何曜日ですか。
    今日は何月ですか。
  今日は何日ですか。

・現在地(各1点):場所の見当識を評価
    ここは何県ですか。
    ここは何市ですか。
    ここは何病院ですか。
    ここは何階ですか。
    ここは何地方ですか。

・記憶(各1点):作業記憶(ワーキングメモリー)に関係
    相互に無関係な物品名を3個聞かせ、復唱させる。
  例えば ①さくら ②ねこ ③電車
  すべて言えなければ6回まで繰り返す。

・計算(各1点)
  100から順に7を引く。5回繰り返す。
  正解は 93→86→79→72→65

・遅延再生(各1点):近時記憶(少し前のことを覚えておく能力)
    記憶してもらった単語を復唱させる。
  ①さくら ②ねこ ③電車

・物品呼称(各1点):健忘失語などでできなくなる。
  時計と鉛筆を見せて、物の名前を答えさせる。

・復唱(1点)
  次の文章を繰り返す。1回のみ行う。
  「みんなで、力を合わせて綱を引きます」    

・言語理解(各1点)
  次の3つの命令を口頭で伝え、すべて聞き終わってから行ってもらう。
  ①「右手にこの紙を持ってください」
  ②「それを半分に折りたたんでください」
  ③「机の上に置いてください」    

・文章理解(1点)
    次の文章を読んで実行してもらう。
  「眼を閉じなさい」    
   
・文章構成(1点)
  短い文章を書いてもらう(自発的なものに限る。誤字脱字は構わない)。

・図形描写(1点)
  重なり合う5角形を書いてもらう。

Pentagon
_____________________________


30点満点となります。
23点以下を認知症とするという基準がありますが、実際には点数で認知症かどうかを判断するのは適切ではないと考えられます。
例えば、40歳の方であれば、29点から30点取れていないとちょっと心配になりますし、85歳であれば27点くらいでも正常範囲とも考えられます。
23点以下であれば、確かに認知症と考えられますが、24点以上でも正常とは言い難く、日常生活への影響などを考慮して判断する必要があります


アルツハイマー病では、日付(時間の見当識)と遅延再生(近似記憶)が早期から強く障害されます。
とくに、遅延再生は海馬といわれる脳の一部と強い関連があり、アルツハイマー病によって海馬が萎縮し、機能低下を来たすと遅延再生ができなくなるのです。
遅延再生について、最初は3つのうち1つ2つ思い出せないというところから始まりますが、進行すると、覚えてもらったこと自体を忘れてしまいます(エピソード記憶の欠落)。こういった症状が出た場合には、より強くアルツハイマー病を疑います。

レビー小体型認知症では、遅延再生は比較的保たれますが、図形描写が障害されます
これは、脳の後頭葉という、視覚中枢(物を見る能力の中枢)が障害され、正確に図形が捉えられなくなることによるものです。
ですから、脳血流シンチグラフィ(SPECT)を行うと、レビー小体型認知症の患者さんでは後頭葉の血流が低下しているのです(参照)。


このように、MMSEは合計点数よりも、どこが出来なかったかを評価することで、認知症のタイプを大まかに調べることができます。


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2015年4月28日 (火)

認知症の検査① 血液検査

認知症診断における血液検査の意義をご説明します。


一見、血液検査は認知症と関係ないように思われるかもしれませんが、実はとても大切です。

私はすべての患者さんに血液検査を行っています。


血液検査といえば、貧血・肝機能・腎機能・コレステロールなどを調べる印象が強いと思います。

当然、認知症診断の時もこれらを調べます。


とくに、アルツハイマー病や脳血管性認知症では、糖尿病をはじめとする生活習慣病が、認知症を悪くする可能性が指摘されています。

ですから、これらの有無を確認するためにも血液検査は必要なのです。



甲状腺機能低下症でも、認知症様の症状が起こることがあります。

特に、高齢女性の患者さんでは甲状腺の機能が低下していることが非常に多く、治療によって認知症様の症状が改善することがしばしばあります。



ビタミンB12や葉酸の欠乏によっても、認知症様の症状が現れることがあります。

このビタミンB12というのは、神経細胞が生きていくうえで大変重要なビタミンです。

なので、欠乏すると神経細胞が障害されてしまうのです。

特に、胃を全部摘出した患者さんで、ビタミンB12を投与されていない場合は、かなりの確率で欠乏しています。

早期に気がつけば治療効果は高いのですが、進行してしまうとなかなか改善しないばかりか、亜急性連合性脊髄変性症といって手足の麻痺などが出現することがあります。


認知症とは直接関連しませんが、高齢な患者さんは多くの病気を抱えていることが多く、実際に血液検査を行うと、思わぬ合併症に出くわすことがあります。

前述のとおり、生活習慣病と呼ばれるものは、認知症を悪化させたり、進行を早めるものがあります

ですので、認知症だけを診るのではなく、合併症も合わせて診ていくことで、より良い状態を長く維持できるように努める必要があります。


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2015年4月27日 (月)

認知症の検査

今回は、認知症の検査についてご説明します。

病院や患者さんの状態によって行う検査に違いがありますのでご注意ください。



血液検査:甲状腺やビタミン欠乏、生活習慣病が隠れていないかチェックします。

神経心理検査:Mini Mental State Examination(MMSE)や長谷川式といったもの忘れの検査を行います。さらに詳しく調べるときには、Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale(ADAS-cog)やウエクスラー記憶検査(WMS-R)といった複雑で時間のかかる検査を行うことがあります。Geriatric Depression Scale(GDS)などのうつ病検査も併せて行うことがあります。

頭部MRI脳の形の異常を調べます。アルツハイマー病では海馬の萎縮がみられます。また、かなり微小な脳梗塞も見つけることができます。併せてMRAという脳血管の検査を行うこともあります。この検査では、脳に詰まりそうな血管がないか、また、動脈瘤がないかが分かります。閉所恐怖症、じっとしていられない患者さん、体内に金属やペースメーカがある、また、磁石付の特殊な入れ歯などがあるとできないことがあります。その時は頭部CTで代用します。

VSRAD(ぶいえすらど):頭部MRIの結果をコンピューター解析して、海馬がどのくらい萎縮しているかを調べる検査です。萎縮の度合いが数値化されます。

・脳血流シンチグラフィ:ECD-SPECT(いーしーでぃーすぺくと) や IMP-SPECT(あいえむぴーすぺくと) と呼ばれる脳の血流を調べる検査です。MRIと違い、脳の機能を評価することができます。アルツハイマー病やレビー小体型認知症では、それぞれ特有の場所の血流低下がみられます。

・MIBG心筋シンチグラフィ:レビー小体型認知症が疑われるときに行う検査です。心臓の交感神経の働きをみる検査ですが、レビー小体型認知症患者さんでは、この検査で異常が見つかることが大変多いです。

・心電図:アルツハイマー病やレビー小体型認知症の治療薬は時として脈を遅くする可能性があるため、あらかじめ心電図をとっておきます。


多くの病院で、血液検査や心電図などを除き、予約検査になります。
一つ一つの検査にある程度の時間がかかるため、何日かに分けて検査を行うことになります

これらの検査を行うことによって、どんなタイプの認知症なのかを見極め、治療につなげていきます。



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2015年4月26日 (日)

認知症外来を受診するときのコツ

認知症外来を受診するときに、しておくと良い準備についてご説明します。

最近、認知症が連日テレビや新聞に取り上げられているため、認知症外来(のもわすれ外来)はどこの病院も予約でいっぱいになっています。

今回は、やっととれた予約を無駄にしないために、コツをお教えします。


まず、認知症外来を受診するときは、患者さんのことをよく知る方が一緒に来ることが望ましいです。

というのも、時々しか会わない方は、患者さんがどの程度生活に困っているかとか、どんな症状があるかというのが分かりません。

そして、特にアルツハイマー病の患者さんは取り繕いが大変上手です。
ですので、時々しか会わない方は、患者さんの本当の症状を見抜けず、つ

いつい軽く見積もってしまいがちです。
ですので、患者さんと一番長く接している方が一緒に来ていただけると大変参考になります。

次に、いつから、どんな症状が、どのように進行しているのかという、今までの症状の変化をまとめておくといいでしょう。

たとえば、

“3年前から薬の飲み間違えが増え始め、2年前から日付が分からなくなることが多くなってきた。昨年から少し前に出かけたこと自体を忘れることがあった。財布などをよくなくすこともあり、誰かにとられたという妄想もしばしばみられる。症状は徐々に進行している様だ。”

という具合です。


生活するうえで困っていることを伝えるのも大切です。

認知症というと、物忘れなどの中核症状(過去のブログ参照)に目が行きがちですが、周辺症状(過去のブログ参照)も大切な症状です。

特に、周辺症状は日常生活を大変困難にします。ですから、被害妄想や徘徊、昼夜逆転、暴言などの困った症状についてもしっかり伝えましょう。

他に治療している病気があるときは、かかっている病院から診療情報提供書(紹介状)をもらっておくと、大変役に立ちます。

もし、もらうことが難しければ、いままでどんな病気をしたか、現在治療している病気はあるか、どんな薬を飲んでいるかが分かると参考になります。

紹介状の有無にかかわらず、お薬手帳は持っていくと必ず役に立ちます

認知症の検査では、ほとんどの場合で頭のMRI検査を行います。

MRIは、体内に金属があるとできないことがあります。また、殆どのペースメーカーがMRIに対応していません。磁石のついた特殊な入れ歯もMRIに対応していません。

かつて手術をされたことがある方は、体内にある機械や金属類がMRIに対応しているかあらかじめ手術した病院で確認すると良いでしょう。

認知症外来では、患者さんと付き添いの方は同じ診察室に入ることが多くあります。

もし、患者さん本人の前では話しにくいことがあれば、あらかじめ書いておいて診察前にスタッフに渡しておくのも方法です。

介護保険に必要な主治医意見書を、認知症外来を行っている病院で書いてもらうのであれば、その旨を伝えた方がよいでしょう。

主治医意見書に必要な事項をしっかり聞き取ることによって、実際より低く介護度が見積もられるのを防止できる可能性があります。

 

ちょっと大変ですが、こういった準備が後々役に立ちますよ。

2015年4月25日 (土)

認知症の症状② 『周辺症状』

前回に引き続き、認知症の症状についてご説明します。

今回は『周辺症状』についてです(中核症状についてはこちら)。

周辺症状はBPSD(behavioral psychological symptoms dementia)と言われることもあります。
英語で書くと、大変難しそうですが、簡単に言うと、

“認知症の症状で、物忘れや理解力の低下以外の、困った症状

と思っていただければおおむね問題ありません。

たとえばアルツハイマー病でよくみられる被害妄想や徘徊などがそれに当たります。

以下によくみられる周辺症状をあげてみます。

  • 妄想:アルツハイマー病では「ものとられ妄想」「嫉妬妄想」が多い。
  • 幻視:幻覚のことです。レビー小体型認知症で多くみられます。
  • 徘徊:介護者がもっとも困る周辺症状の一つです。
  • うつ:認知症にうつ症状は大変合併しやすく、時にはうつ病の治療も行います。
  • 不安:もの忘れに伴い、不安が強くなります。逆に楽天的になることもあります。
  • 暴言・暴力:性格変化により攻撃的になることがあります。
  • 介護拒否:現実と実際のギャップが理解できないために「介護は必要ない」と訴えることがあります。
  • 興奮:落ち着きがなくなり、騒ぎ出すことがあります。
  • せん妄:入院や体調不良時に起こりやすい傾向があります。興奮したり、逆におとなしくなりすぎることがあります。ひどく寝ぼけた状態と考えてください。
  • 昼夜逆転:夜中に活動的になることで、介護者が疲れてしまいます。

これら以外のも、認知症に伴って出現する「困った症状」は周辺症状(BPSD)です。

認知症外来では、物忘れの進行抑制が第一の目標ですが、周辺症状の改善も大切な役割です。

周辺症状は、薬物による治療のほか、介護者の対応方法の改善、デイサービスなどの活用によって改善する可能性があります。

今後、周辺症状に対する治療についても扱っていきたいと思います。

2015年4月24日 (金)

認知症の症状① 『中核症状』

認知症の症状は大きく2つに分類することができます。

もの忘れなどを主体とする『中核症状』と、被害妄想などの『周辺症状』です。
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この2つの症状に対する治療は異なるため、しっかりと区別しておく必要があります。


今回は、中核症状についてご説明します(周辺症状についてはこちら)。


中核症状とは、その字のごとく、認知症の主となる症状です。

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 実行機能障害
  • 理解力・判断力の障害

これらが中核症状と呼ばれるものです。

1つずつ解説します。

  1. 記憶障害少し前のことを忘れてしまうといった症状です。アルツハイマー病では初期から目立ちます。最初は忘れっぽくなったなという感じから始まり、進行すると体験したこと自体(たとえばご飯を食べたかどうかわすれる=エピソード記憶の障害)を忘れるようになります。大切なものをどこに片づけたかわからなくなるのも症状の一つです。
  2. 見当識障害:時間と場所の見当識障害があります。時間の見当識障害が出ると、日付や時間が分からなくなります。アルツハイマー病では初期から時間の見当識が障害されやすい特徴があります。場所の見当識障害がでると、自分が今いる場所が分からなくなり、迷子になりやすくなります。
  3. 実行機能障害:料理の手順が分からなくなる、家電やリモコンの使い方が分からなくなるといった症状が出ます。特に料理は献立を考えたり、調理する過程が複雑なので、障害されやすい傾向があります。料理の段取りが悪くなったとか、バリエーションが少なくなったというのも、症状である可能性があります。
  4. 理解力・判断力の障害:考える速度が遅くなったり、複雑なことが理解しにくくなってきます。複数のことを同時に行うことも困難になってきます。また、いつもと違う状況におかれると混乱してしまうことがあります

もの忘れについては「病的なもの忘れと、そうでないもの忘れ」 も参照してみてください。

中核症状は、年齢のせいにされがちで、結構進行するまで様子を見られてしまうことが少なくありません。

こういった症状に早めに気がついてあげることによって認知症の進行を少しでも緩やかにし、健康寿命を延長することが大切です。

2015年4月23日 (木)

花々

霧島ツツジがちょうど満開となりました。
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その脇には植えた覚えのない花が。
なんの花でしょうか。
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バラはもう少しですね。
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認知症の原因③ 脳血管性認知症

認知症を惹き起こす原因として最も多いのがアルツハイマー病です。

 

その次に多いのが脳血管性認知症かレビー小体型認知症と言われています。

 

どちらが多いかは報告によってまちまちですが、印象として、純粋な脳血管性認知症はレビー小体型認知症と同じくらいと思います。

しかし、アルツハイマー病との合併は結構多いのではないかと思います。

 

さて、この脳血管性認知症とはどういったものなのでしょうか。特徴をお示しします。

 

  • 脳梗塞や脳出血によっておこる認知症

 

  • 手足の麻痺などの後遺症を伴うこともある

 

  • 症状は、障害された脳の部位によって様々

 

  • 突然発症するものからゆっくり進行するものまで存在

 

  • 高齢者のアルツハイマー病に合併する事も多い

 

などがあげられます。

 

アルツハイマー病やレビー小体型認知症は脳細胞が変性して徐々に減っていきますが、脳血管性認知症では、脳に酸素や栄養を送っている血管が詰まることによって、脳細胞が死んでしまい、認知症となります。

 

大きな血管がいきなり詰まって、突然発症するタイプと、細い血管が徐々につまってゆっくり進行するタイプがあります。

 

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左の写真は、細い血管がジワジワ詰まるタイプの脳梗塞によって引き起こされた認知症患者さんの脳のMRI(FLAIR)です。

 

右は正常な画像です。

 

比較すると、白い部分がかなり目立ちます。これは全て脳梗塞です。

 

こうなってしまうと、認知症になったり、手足の動きがぎこちなくなるなどの症状が出てきます。

 

脳血管性認知症は動脈硬化によって引き起こされていると考えられます。

  •  高血圧
  • コレステロール異常(LDLが高い/HDLが低い)
  • 糖尿病

 

これらをしっかり治療すれば、アルツハイマー病やレビー小体型認知症より予防しやすい認知症であると考えられます。

 

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2015年4月22日 (水)

アルツハイマー病を早く見つけるために

アルツハイマー病では、日付や少し前のことを覚えておく能力が初期から障害されます。

これらを調べるために、診察室ではMMSEや長谷川式などの認知機能検査をおこないます。

これらの検査項目のうち、アルツハイマー病では、日付(特に平成~年)と、少し前のことを覚えておく能力について、出来が悪くなってきます。

日付を間違えるようになったとか、昨日の晩御飯の内容が思い出せないなんていうのは症状の一つです。

また、もし体験したことをごっそり忘れているようなことがあれば、それは重大なサインです。
たとえば、ご飯を食べたこと自体を忘れているといった例。これはエピソード記憶の欠落で、認知症でみられる物忘れです。



ご家庭でこういった検査を行うと、患者さんが不審に思うので、さりげなく日付(季節・年月日・曜日)を聞いたり、昨日の出来事を聞いたりするのが良いと思います。

ちゃんと答えられれば良いのですが、そうでないときに『取り繕い』をするようであれば、より一層アルツハイマー病を疑います。

物忘れが出ると、ついつい歳のせいにしがちですが、少し疑いの目をもってみると、潜んでいる認知症の芽を早めに見つけることができるかもしれません。

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2015年4月21日 (火)

病的なもの忘れと、そうでないもの忘れ

早期受診をお勧めしている私ですが、外来には時々すごく心配症な患者さんも来院されます。

 

ちょっと物忘れがあったから心配になったというケースです。

 

では、心配なもの忘れとそうでないもの忘れの違いは何でしょうか。

 

具体的な例で考えてみましょう。

 

『スーパーに買い物に出かけて、卵・鶏肉・人参・リンゴ・醤油を買う予定でした。
でも、醤油を買い忘れてしまい、おうちに帰ってきてしまいました。
帰ってきたところで醤油を買うのを忘れたことに気がつきました。』

 

よくあることですね。私も良くやります。
この場合、忘れたことにも気がついていますし、問題ないでしょう。

『昨日の晩御飯の話をしていたところ、食べたものについてだいたい思い出せるのですが、もう1つか2つあったようです。それがなかなか思い出せません。
でも、家族と話しているうちに思い出せました。』

 

若い人でこれだとちょっと不安かもしれませんが、高齢者であれば許容範囲ではないでしょうか。
しかし、これがほとんど思い出せなくなる様では少々心配です。

 

『昨日家族でお買い物に行きました。
次の日その話をすると、お買い物に行ったことが思い出せないようで、なんとなく取り繕っている様子でした。』

 

これは危険なもの忘れです。
ただのもの忘れと、認知症のもの忘れの決定的な違いがここにはあります。

 

ただのもの忘れの場合、体験したことのなかの一部の記憶が欠けてしまうにとどまります。

 

たとえば、前述したとおり、晩御飯の内容のうち一部が思い出せないというものです。
さらにヒントがあれば思い出せることが多いのも特徴です。

 

それに反して、認知症のもの忘れは体験したこと自体を忘れてしまう傾向にあります。

 

今回の例では買い物に行ったこと自体を忘れているということです。

 

こういった記憶をエピソード記憶といいます。

 

もし、エピソード記憶に問題があれば、それは認知症のサインです。

 

また、取り繕いもアルツハイマー病で大変よく見かける症状の一つです。

 

こういった症状がないか、注意深く観察することで、早期発見できるかもしれません。

2015年4月20日 (月)

東京より遅れる事 桜

水曜日の物忘れ外来以外の日は、新潟県の病院で勤務しております。

 

こちらでは桜が満開でした。

 

が、昨夜の雨で散ってしまいました。

 

病院の駐車場には桜の花びらがご覧の通り。

 

これも、今夜の雨で流れてしまうことでしょう。

 

関東とちがって日本海側は冬の間中、雨か雪で、やっと春になったのに今年はイマイチ天候がすぐれません。といっても去年から新潟へ赴任しているので今回の事しかわからないのですが(長年住んでいるドクター曰)。

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認知症の原因② レビー小体型認知症

最近名前を耳にするようになったレビー小体型認知症。
認知症を起こす原因として2番目か3番目に多いとされています。
では、このレビー小体型認知症とはどんな病気なのでしょうか。

 

レビー小体型認知症の特徴は以下の通りです。

 

  • 認知機能の変動(良い時と悪いときあり)
  • 幻視(部屋の隅に子供、犬がいるなど)
  • うつ症状 便秘・ひどい立ち眩み(自律神経症状)
  • パーキンソン症状(手のふるえ、歩幅が小さくなる、体が動かしにくくなる)

 

たとえば、こんな患者さんが典型的です。

 

75歳の男性。
1年前から軽い物忘れがあった様子。
半年前から部屋の隅に子供がいるという幻視(幻覚)が出現。
また、調子のいい時と悪いときの差が激しく、良いときは正常に近いけれど、悪いときはぐったりしていることもある。
気分がすぐれないことも多く、最近は便秘気味。
以前に比べると表情が乏しく(仮面様顔貌)、歩き方もぎこちない感じになってきている。

 

認知症なので、認知機能も障害され、物忘れが出現します。
しかし、アルツハイマー病と比べて少し前のことを覚えておく能力の低下は軽い傾向にあります。
そのかわり、計算が苦手になったり、図形の模写(MMSEの五角形の模写)が難しくなる傾向が強くなります。

 

幻視(幻覚)について、全く何もないところに物が見えるというよりは、暗くてよく見えないところにある影などが人や動物に見えるといったことが多く、患者さん本人は大変リアルに見えているようです。

 

ちなみに、幻視や図形の模写ができなくなるのは、目で見たものを感じる脳の部分(後頭葉というところ)が障害され、うまく物の形が捉えられなくなることが原因と言われています。

 

脳血流検査では、後頭葉の血流が悪いというのが特徴的です(色のついているところが血流低下部位)。

 

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レビー小体型認知症は、パーキンソン病とほとんど同じ病気であると考えられています。
そのため、進行すると、手のふるえや歩きにくさ等といったパーキンソン病と同じ症状が出現します。

 

また、パーキンソン病でよくみられる自律神経の障害も出現するため、便秘や立ち眩みといった症状が出現しやすくなります。

 

こういった症状が出現した時には、パーキンソン病治療薬を使って症状を緩和する必要があります。

 

そして、アルツハイマー病に比べ進行が早いことが多く、体の動きも悪くなりやすいため、転んだり、食べ物がむせて肺炎になる(誤嚥性肺炎)ことも多く、より一層注意が必要な病気であるといえます。

 

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2015年4月19日 (日)

認知症の原因① アルツハイマー病

認知症と言えばアルツハイマー病というイメージの通り、認知症を起こす病気で最もおおいのが、アルツハイマー病です。
おそらく、認知症の患者さんの半分くらいがこれです。

 

では、アルツハイマー病はどういった病気なのでしょうか。

  

特徴として、

 

  • 徐々に進行する認知障害

 

  • 生活に支障をきたす

 

  • 進行すると食事や着替え、意思疎通が困難となる

 

  • 被害妄想・暴言・暴力・徘徊などの問題行動が見られることもある

 

があげられます。

   

例えば、こんな患者さんがきたらアルツハイマー病を疑います。

  

  • 3年前より、日付を間違える、約束を忘れる、ものをどこにしまったか思い出せないという症状が出現した。

 

  • 2年前より、同じものを買ってくるようになり、部屋の片づけも以前ほどできなくなってきている。

 

  • 1年前より、財布や通帳を取られたということを言うようになってきた。

  

 

徐々に進行するもの忘れ、生活への支障、被害妄想

 

アルツハイマー病っぽいですね。

   

受診のタイミングとしては、3年前の時点がベストです。

 

というのも、今の医学では、アルツハイマー病の進行を遅らせることしかできません。

 

ですから、悪くなってから受診するよりも、悪くなる前に受診した方が、認知機能をより長く保つことができるのです。

 

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2015年4月18日 (土)

認知症とアルツハイマー病は同じ?

私が外来で最もおおく受ける質問がおそらくこれです。

 

~症というのは、ある症状をもった状態のことを指します。
認知症は認知機能に問題が生じた状態なので、その原因は何でもいいのです。

 

一方、~病というのは、特定の病気の名前を指します。
アルツハイマー病では脳にアミロイドというたんぱく質が溜まったり、脳細胞が減ったりした結果、物忘れが生じる病気なのです。

 

認知症患者さんが100人いたら、50人から60人はアルツハイマー病で、5人くらいがレビー小体病、脳血管性認知症も同じくらいとされています。残りはそのほかの認知症です。
この数字には研究によってばらつきがありますが、アルツハイマー病が一番多いというのは、共通しています。

 

ところでアルツハイマー病とアルツハイマー型認知症の違いについてですが、かつてはこの二つを分けて使っていたことがあります。しかし、最近は単にアルツハイマー病とすることが多い様です。

 

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2015年4月17日 (金)

どういう状態になったら認知症か?(2017年10月19日改訂)

前回に引き続き、「どういう状態になったら認知症か」を説明します。

 

認知症の診断の中に、『日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態』とありますが、これについてちょっと説明してみましょう。

 

人間、年を取ると残念なことに多かれ少なかれ能力の衰えがみられます。
たとえば、昔のように走れなくなったとか、重いものを持ち上げられなくなったとか。
でも、これらは当然病気としては認識されていません。

 

脳についても同じことが言えます。

 

計算力や記憶力が落ちたということは当然認められるわけです。
では、こういった状態になったらすべて認知症なのかというと、当然そんなことはありません。

 

たとえば、働き盛りの40歳なのに、平均的な80歳の能力しかないとしたら、これは問題です。
きっと会社や日常生活で問題が起こってくるでしょう。こうなると認知症です。

 

しかし、余生を過ごす80歳が平均的な80歳の能力を発揮できたとしたら、これは認知症ではありません。

 

我々の生活には年齢に応じて求められる能力に差があります。
小学生が方程式を解けなかったとしても、それが異常であるとは言えません。
それと同じで、80歳には80歳に求められる能力があり、それを満たしていれば認知症ではありません。

 

でも、日常生活がちょっと怪しいぞ!と思われるのであれば、おそらく軽度認知障害なのでしょう。

また、生活している環境も重要です。

一人暮らしの場合、生活を維持していくためには、たくさんの仕事があり、それができなくなってしまえば、生活に支障がでて、認知症と診断されてしまう可能性が高くなります。


家族と同居していれば、知らず知らずのうちにサポートしてもらえ、生活に支障をなかなか来さないため、認知機能が多少悪くても大丈夫であることもよくあります。


町内みんな知り合いという地域であれば、生活に支障をきたしにくいでしょうし、隣に住んでいる人がだれかわからないような地域であれば、早々に支障をきたすかもしれません。


このように、どのくらい認知機能が低下したら認知症となるかどうかは、その人の環境に大きく依存しているのです。


一律に、長谷川式やMMSEで何点以下であったら認知症というものではなく、生活にどの程度影響しているかが大切です。

 

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2015年4月16日 (木)

正常と認知症の境界(2017年10月19日改定)

前回、認知症とは何ぞやということを書きました。

 

そこでは認知症は徐々に進行することが多いと書きました。

 

すると、正常と認知症の境界は曖昧なのではないかという疑問が生まれてきます。

 

そこで、今回はどこからが認知症なのか書いてみようと思います。

 

認知症かどうかの基準は

 

『今までできていたことができなくなり、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態』

 

になっているかどうかです。

 

すごく曖昧ですね。

 

ですので、当然グレーゾーンが存在します。

 

そのグレーゾーンにある状態を軽度認知障害(MCI)と言います。


認知症を予防していくうえで、軽度認知障害(MCI)の時点で早く見つけて本物の認知症に進行しないように(進行を遅らせる)することも非常に大切です。

Mci

一度進行すると元に戻すことはできない認知症。ですので、怪しいなと思ったら早めに受診して、進行を遅らせるための治療を開始することを検討しなければいけないのです。

 

http://kumeiin.jp/

2015年4月15日 (水)

認知症の定義

「認知症」ってなんでしょう。

 

ガイドラインによる定義では

「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断等多数の高次脳機能の障害からなる症候群

とされています。

大変わかりにくいですね。

 

『慢性』

というのは、一時的でなく、その状態が長く続いていることを意味します。

 

『進行性』

というのは、病気が悪化することを意味します。急速に悪化することもあれば、極めてゆっくりなこともあります。

アルツハイマー病などの認知症は、一部例外を除き、ゆっくり進行し、その状態が長く続きます

 

『記憶』

記憶にもいくつかの種類があります。3分前のことを覚えておくのと、1年前のことを覚えておくのでは大分違いますね。

また、人の名前を覚えておくのと、ある出来事をストーリーとして覚えておくのも違います。自転車の乗り方を覚えておくのもまた別の記憶です。

記憶の種類については、

見当識についてお話します。見当識とはだいぶ聞きなれない言葉だと思います。私も専門にするまで知りませんでした。

 

「自分がどこにいるのかわかる」「今の時刻がわかる」というのが見当識が保たれている状態です。

 

前者を場所の見当識、後者を時間の見当識と言います。

 

言語について簡単に説明します。言語障害になると失語という症状が出てきます。

 

失語症にはいくつかのタイプがあり、例えば、話している意味は分かるけれど喋れないという「運動性失語」や、喋れるけれど話す内用はめちゃくちゃな「感覚性失語」、また、物の名前が思い出せなくなる「健忘性失語」などがあります。健忘性失語は比較的よくみられ、会話の中に「あれ」とか「それ」という代名詞が増えてきます。

 

これらの脳の機能が徐々に悪化するのが認知症なのです(例外もあります)。

 

http://kumeiin.jp/

2015年4月14日 (火)

認知症激増(2017/06/23 改訂)

最近何かと話題の認知症、認知症患者さんの数は、以前言われていたよりもずっと多いことがわかってきました。

 

 

 

厚生労働省の発表によると、認知症患者さんは2025年には700万人以上になるといわれています(65歳以上の5人に1人。これは10年前に2025年の患者数を推計した時の倍以上になっています。

Kanjasuu

 


なんでこんなに増えてしまったかについて、正確なことはわかりませんが、人間の寿命が延びて、脳の加齢に伴う機能低下が目立つようになったことや、認知症へ注目の高さが、今まで潜んでいた患者さんを見つけ出したこと、また、生活が高度で複雑になったため、認知機能の低下が目立つようになったことなどが関係しているかもしれません。

 

 

 


さて、これを読まれている方はおそらく認知症ではないと思いますが、現在、認知症のなかで最も多いとされるアルツハイマー病を治すことはできません。現在できるのは進行を遅らせる事だけです。

 

 

 

でも、アルツハイマー病を含む認知症は、生活習慣や、様々な身体の病気と関連していることが分かっています。

ですから、これらに気を付けていれば、認知症になり難くなることができるかもしれません。

 

 

もし、認知症になり難くする取り組みを、みんなが行ったら、2025年に予測されている患者数は、減らせるのかもしれません。

当ブログでは、認知症の治療や予防などに関する様々な話題をご提供します。

皆様も一緒に認知症に詳しくなりましょう!

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