受診したがらないときには
認知症外来へ受診するときに、患者さんご本人を連れて行くのが大変という声をしばしば耳にします。
アルツハイマー病をはじめ、多くの認知症には自覚症状というものがありません。
例えば風邪をひいたら熱が出たとか、のどが痛いという自分にわかる症状がでます。
しかし、アルツハイマー病の場合、物忘れをしている自覚はありません(厳密に言うと、ごく初期には自覚があるようです)。
ですので、患者さん本人は病院へ行って検査をしなければいけない理由がわかりません。
多くの方は、少し物忘れがあるから検査したいとか、家族に言われたので検査しますという様に、検査に対して強い抵抗はないのですが、一部(といっても決して少なくない)の患者さんは、かたくなに受診や検査を拒否されます。
こういった方は、経験上、男性のほうが多いでしょうか。
さて、こういう場合にどうしたらいいか。
結論から言うと、どんな時にでもつかえる万能な手段はありません。
時と場合に応じた臨機応変な対応が必要です。
では、臨機応変に対応するためのヒントをお教えしましょう。
大原則として、患者さん本人のプライドを傷つけないようにしましょう。
一番よくないのは、物忘れを指摘して、認知症なんだから検査しなきゃ!というパターン。
これをやってしまうと、自覚症状のない患者さんは、プライドを傷つけられ、私は認知症じゃない!と反発してしまいます。
では、どうするか。
例えば、「物忘れを予防するための検査」というように伝えてみるのは手です。
私の個人的リサーチによると、高齢患者さんのもっともなりたくない病気ナンバーワンは、癌ではなく、今や認知症です。
それを予防できるのなら!ということになるわけです。
他には、「脳梗塞や動脈瘤、糖尿病などの生活習慣病を調べる脳と体の健康診断」というのはいかがでしょうか。
実際に、物忘れの検査をおこなって、初めていろいろな病気が隠れていたことがわかったなんてことは日常茶飯事です。
それでもダメなときは、奥様(ご主人)と一緒に受診するのも良くある方法です。
もし、信頼するかかりつけ医がいるのであれば、説得してもらうのも一つの方法です。
どの方法も完璧ではありませんが、うまく対処すると受診してくれる可能性は高まります。
しつこいですが、最後にもう一度。
『患者さん本人のプライドを傷つけないようにしましょう』
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