認知症の検査① 血液検査
認知症診断における血液検査の意義をご説明します。
一見、血液検査は認知症と関係ないように思われるかもしれませんが、実はとても大切です。
私はすべての患者さんに血液検査を行っています。
血液検査といえば、貧血・肝機能・腎機能・コレステロールなどを調べる印象が強いと思います。
当然、認知症診断の時もこれらを調べます。
とくに、アルツハイマー病や脳血管性認知症では、糖尿病をはじめとする生活習慣病が、認知症を悪くする可能性が指摘されています。
ですから、これらの有無を確認するためにも血液検査は必要なのです。
甲状腺機能低下症でも、認知症様の症状が起こることがあります。
特に、高齢女性の患者さんでは甲状腺の機能が低下していることが非常に多く、治療によって認知症様の症状が改善することがしばしばあります。
ビタミンB12や葉酸の欠乏によっても、認知症様の症状が現れることがあります。
このビタミンB12というのは、神経細胞が生きていくうえで大変重要なビタミンです。
なので、欠乏すると神経細胞が障害されてしまうのです。
特に、胃を全部摘出した患者さんで、ビタミンB12を投与されていない場合は、かなりの確率で欠乏しています。
早期に気がつけば治療効果は高いのですが、進行してしまうとなかなか改善しないばかりか、亜急性連合性脊髄変性症といって手足の麻痺などが出現することがあります。
認知症とは直接関連しませんが、高齢な患者さんは多くの病気を抱えていることが多く、実際に血液検査を行うと、思わぬ合併症に出くわすことがあります。
前述のとおり、生活習慣病と呼ばれるものは、認知症を悪化させたり、進行を早めるものがあります。
ですので、認知症だけを診るのではなく、合併症も合わせて診ていくことで、より良い状態を長く維持できるように努める必要があります。
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