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2015年5月31日 (日)

認知症の早期発見のために

認知症の早期発見の重要性についてはこちらへ。


認知症を早期発見するのは、案外難しいと考えています。

その理由を以下にあげます。

①自覚症状に乏しい

②多くの認知症はゆっくり進行するため、認知機能の低下に気がつきにくい

③認知症を発症しても、初期であれば家庭内のことはおおむね問題なくできるため、発症に気がつかない

④多少あやしいところがあっても年齢のせいにしがち

⑤早期の認知症は症状が軽く、かかりつけ医(認知症が専門でない)も診察時間内に見抜くのは困難



では、早期発見のためにはどのようなことに気を付ければよいでしょうか。


認知症の原因として最も多いアルツハイマー病では、早期から日付が分からなくなる傾向があります。
また、少し前のことを思い出すことが苦手になります。
ですから、今日の日付(できれば年・月・日・曜日)や、昨晩の献立などを聞いてみるというのは方法です。
ただし、献立についてはすべていえる必要はなく、高齢者であれば主なものが出てくれば良いと思われます。

認知症のもの忘れで特徴的なのが、エピソード記憶(体験したこと)の欠落です。
晩御飯を食べたはずなのに、食べたかどうかが分からないということがあれば、それはエピソード記憶の欠落です。
エピソード記憶の欠落があれば、認知症である可能性は高くなると考えられます。

認知症では物の名前が出にくくなるため、「あれ」や「それ」といった代名詞が増える傾向にあります。
日常的につかうものにおいて、代名詞を用いる場合は要注意です。
ただし、かかわりの深くない人物(テレビに出てくる人など)の名前は年齢とともに出にくくなるので、人の名前が出てこないからと言って認知症であるということは言えないと思われます。

料理の献立を考えることはとても複雑なことです。
レパートリーが減ったとか、料理にかかる時間が長くなったとか、味付けがおかしくなったということがあれば、認知機能の低下を疑います。

同じ話を何度もするというのも症状の一つであることがあります。
これは、以前に話をしたという記憶がなくなってしまうためと考えられます。

会話の流れについてこれない、取り繕いがみられる、などという症状も見られるようになります。


いずれも、この症状があったら即認知症だというものではありませんが、認知症を早期に発見するためには、これらの症状がないか注意深く観察する必要があります。

そして、これらのサインを見つけたら、物忘れ外来に一度ご相談を。

2015年5月29日 (金)

認知症の早期発見の重要性

認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の状態から、認知症薬で治療した方がいいのか、しなくていいのかについては賛否両論あり、結論は出ていないと思いますが、認知症が悪化してから治療を行うより、初期から治療を行った方がいいということについて反対の意見を持つ方は少ないと思います。

では、なぜ早期から治療を行った方が良いのでしょうか。


以前もお出ししたスライドですが、ご参照ください。

01
現在、認知症の最も原因となっているアルツハイマー病の治療は、いずれも進行速度を緩やかにする効果しか認められていません。

悪くなった認知機能を回復させることができないのです。

ということは、悪くなる前から治療を行った方が、より良い状態を長く維持できると考えられるわけです。


また、アルツハイマー病は高血圧によって悪化する速度が速くなることがわかっています。

これらのことを考えると、早期から治療を行い、認知症薬の投与や高血圧などの合併症治療を行うことによって、より良い状態を長く維持できる可能性があります。


ですから、アルツハイマー病は早期発見し、早期治療を行うべきだと考えています。


また、アルツハイマー病以外の認知症についても同様と考えられます。

さらに、ビタミン欠乏や甲状腺機能低下症由来の認知機能低下については、回復させることができるかもしれませんので、物忘れが出現したら早い段階で一度受診を行った方がよいと考えられます。



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2015年5月25日 (月)

薬はできる限り1日1回

認知症患者さんにおいて、薬を毎日間違えなく飲むことは非常に難しい。

実際のところ、介護者が飲ませてあげることになるのですが、一日に何度も飲ませてあげるとなると、相当大変です。

また、回数が多くなればなるほど飲み忘れも増えます。

せっかくの良薬も飲まなければ効きません。


ですから、薬を処方するときに可能な限り1日1回だけで済むように工夫します。


また、錠数が増えると飲むのも大変ですから、合剤といわれる2種類の成分が1錠にまとめてはいっているタイプの薬を積極的につかいます。

さらに、飲みやすくするために、口の中ですぐに溶けるOD錠(D錠)というタイプのものがあれば、そちらへ切り替えます(たとえば、アリセプトからアリセプトDへのきりかえ)。


薬局で一包化(朝の薬が何種類かあれば、朝分をまとめてパックに入れてくれるサービス)してもらうのも、方法です。
一包化は当院の院内薬局でも行っています。


ちょっとした工夫で飲み忘れや介護負担が少しでも減るようにしています。


アリセプトは、飲みやすさを追求し、ゼリータイプのものもあります。


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2015年5月23日 (土)

抗精神病薬の危険性

認知症によって出現する、妄想・暴言などの問題行動に対して、抗精神病薬と言われるタイプの薬を用いることがあります。

本来、この薬は統合失調症という精神疾患のための薬で、強い鎮静効果があるのが特徴です。

ですから、認知症で暴れてしまう患者さんに抗精神病薬を用いるとおとなしくなります。

量を増やしていくと効果は強くなり、ぐったりしてしまったり、一日中寝てしまうくらいの鎮静をかけることもできます。

とくに、レビー小体型認知症(DLB)の患者さんでは、効果が強く現れる傾向があります。


抗精神病薬には、古くから使われている定型抗精神病薬(セレネースなど)と新しく誕生した非定型抗精神病薬(リスパダール、セロクエル、エビリファイ、
ジプレキサなど)というものがあります。

定型抗精神病薬は、鎮静作用が強い反面、体の動きや認知機能なども悪化するいう副作用が強く、投与によって死亡率も上昇するという報告もありました。

これらの副作用を改善すべく誕生したのが非定型抗精神病薬でした。


しかし、2005年にアメリカのFDA(日本でいう厚生労働省)が、高齢者の認知症による問題行動に対して非定型抗精神病薬の投与したところ、死亡率が高くなったから注意せよという発表をしました(1.7倍程度に上昇したとのこと)。

確かに定型抗精神病薬よりは安全ですが、非定型抗精神病薬も危険な薬だったわけです。


では、認知症に対する問題行動に対して非定型抗精神病薬の投与を一切しないで良いかというと、現実的には難しいわけです。ですから、より一層、慎重に投与するということになりました。

その影響か、日本で行われたJ-CATIAという研究の中間報告では、定型・非定型抗精神病薬ともに、死亡率を高めないという結果が得られています。


抗精神病薬は、他の薬に代えがたい効果がありますが、両刃の剣であるため、ごく少量から投与を開始し、徐々に増量、必要最小限の量にとどめるべきと考えています。



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2015年5月21日 (木)

入院すると認知症が悪化する(2017年11月28日改訂)

認知症患者さんの多くは高齢なため、若い方に比べて入院する危険性が高くなります。

しかも、入院というのは認知症にとってかなりの強敵です。

入院を契機に認知症が悪化して、そのまま施設へという流れになってしまった患者さんを何人見てきたかわかりません。

そもそも認知症になると、体調が悪くなってもそれをきちんと伝えることができなかったり、突発的な事故(転倒など)をおこしたりと、認知症のない高齢者と比較しても、入院する危険性が高くなります

ですから、認知症患者さんの体調管理には十分注意する必要があります。

いつもより元気がない、食欲がない、熱や咳をしているなどといった症状があった場合、様子を見ずに早めに医療機関へ受診し、できるだけ入院せずに済むようにしたいですね。


~入院すると認知症が悪化する理由について~

入院によって突然環境が変わると、患者さんは大変混乱します。
ただでさえ体調が悪いのに、環境の変化によって混乱し、せん妄という状態に陥ってしまいます。

せん妄とは、『ひどく寝ぼけた状態』と思っていただければよいと思います。

定義としては、以下の通りになります。

_________________________
急性発症、一過性、可逆性の意識障害や意識変容

見当識障害、注意集中困難、認知機能の低下、記銘力障害、興奮、錯乱、幻覚、妄想、活動性低下などの症状が出現
_________________________



ちょっとイメージしづらいと思いますが、実際にはこんな感じです。

_________________________

肺炎で入院し、点滴や酸素の投与で状態は落ち着いたと思ったところ、大声をあげ、夜中に騒いで、点滴を引き抜いたり、酸素も外して言うことを聞いてくれない。さらにベッドから転落してケガをしてしまった。

_________________________

こんなこと本当に起こるのかと思う方もいらっしゃると思います。

私も学生の時はそう思っていました。

ところが、認知症の有無にかかわらず、高齢者ではせん妄を起こすことが全く珍しくありません。

特に、認知機能の低下している場合は、その頻度が高いのです。



そうすると、ベッドに無理やり寝かされて、そのうちに筋力が低下し、1週間もすると立てなくなって…

という事態が起こります。もう寝たきりですね。



また、認知機能の低下している人はせん妄を起こしやすいといわれていますが、せん妄を起こすと、認知機能に悪い影響を与えるとも言われています。

(教科書的にはせん妄は可逆性であって、元に戻ると書いてありますが、元の認知機能にまで必ず戻るわけではなさそうです)

_________________________

認知症で体調不良を訴えられない/転んで骨折しやすい 等

重症化する

入院すると環境が変わる + 体調も悪い

せん妄をおこして騒ぐ

ベッドに拘束される

筋力低下(廃用)となって歩けなくなる + 認知機能がさらに低下する


自宅に帰れなくなる

_________________________

繰り返しますが、この悪い流れに乗らないためにも、まず入院しないように健康に十分気を付けましょう。

そして、体調が悪ければ早めに受診してください。

肺炎球菌やインフルエンザのワクチン接種も有効な対策です(インフルエンザワクチンは無効だということを書いてあるところもありますが、WHOは推奨していますし、みんなが接種することによって、インフルエンザの流行を抑える効果があります)。

入院は認知症にとって大敵!日頃からしっかりとした体調管理を。

~関連ページ~

せん妄を抑えるには

おとなしいせん妄にご注意を



久米医院

2015年5月19日 (火)

ココナッツオイルは認知症にいいのか?

『ココナッツオイルが認知症にいい』という情報をしばしば耳にします。

ここでいう認知症はアルツハイマー病のことを指しているのですが、どうなのでしょうか。

結論から言うと、効くかどうか現時点で良く分かりません。

というのも、効果を裏付けるために必要な規模の研究がなされていないというのが、現実なようです(調べた範囲ではですが)。


いくつかの研究では、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸という成分が、体内でケトン体になり、これが脳細胞の栄養となるとか、ココナッツオイルの成分がアルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドベータの悪い作用を弱めるといったものがありました。

なので、一概に効果がないということもないと思われます。

ただし、劇的に効果があるというものではなさそうですし(劇的に効いたという1例報告はありましたが)、ココナッツオイルを摂取すればアルツハイマー病にならないということもないのではないかと思います。

ココナッツオイルを摂取するのは良いのですが、合併症(高血圧・糖尿病・コレステロール異常などの生活習慣病)を含めた治療をしっかりと受けたうえで、追加として行っていただきたいと思います。

もし、ココナッツオイルにきちんとした効果があったとしても、生活習慣病を放置していたら、きっと効果は弱まってしまうでしょう。

2015年5月18日 (月)

高血圧と認知症

高齢者の認知症は、いくつかの原因によって引き起こされていることが多いのですが、その中でも脳梗塞は大変重要な要素を占めています。

 

脳梗塞によって引き起こされる認知症を脳血管性認知症といいます。

 

脳梗塞には。麻痺を伴う大々的なものと、明らかな麻痺はないけれどじわじわ進行するもの(ビンスワンガータイプ)などがあります。

 

どちらでも認知症を起こしますが、じわじわ進行するタイプは一見アルツハイマー病に良く似ています

 

また、高齢者の場合、脳血管性認知症はアルツハイマー病とも合併しやすく、高齢者の認知症=アルツハイマー病+脳血管性認知症 となっていることも珍しくありません。

 

脳血管性認知症の原因となる脳梗塞は、長年にわたる血管へのダメージが原因と考えられています。

 

血管にダメージを与えるものはたくさんあり、例えば喫煙・高血圧・糖尿病・コレステロール異常などがあげられます。

 

その中でも高血圧はもっとも大きな原因と考えられています。

 

ですが、高血圧は現在、多種多様の薬があり、生活習慣の改善と薬物治療で血圧のコントロールは非常に行いやすくなっています。

 

血圧をしっかり管理することによって、将来認知症になる危険性を減らせると考えられています。

 

また、認知症患者さんに合併する高血圧を放置しておくと、認知機能の悪化が早くなるとも言われています。

 

ですから、高血圧は、脳梗塞や心筋梗塞だけではなく、認知症予防のためにも、若いうちからきちんと治療を行う必要があります。

 

血圧治療は年を取ってからも有効ですが、蓄積されたダメージが問題となるため、ダメージの少ない若いうちからきちんと治療を行うほうが効果が見込め、そうすることによって、将来認知症になり難くなると考えられます。

 

健康診断で血圧(やコレステロール・糖尿病)に異常のあった方、決して放置しないでくださいね。

 

血圧の基準はこちらを参照してください(高血圧学会

2015年5月15日 (金)

介護者の負担軽減のために

認知症の介護は、かなり大変です。

とくに、足腰のしっかりしている患者さんは、どこかにいってしまったりと目が離せないことがしばしばです。

前回、認知症の問題行動対策について書きましたが、これを実践すると、最初のころは介護者にとって精神的負担が大きくなります。

今回は、負担軽減のための対策を書きたいと思います。


負担軽減のために、介護者は患者さんと一定の距離を取る必要があります。

いつも一緒にいると疲れてしまうため、時間・空間的に距離をおくのです。


距離を取るために、患者さんを日中預かってくれるデイサービスと、一定期間預かってくれる(宿泊あり)ショートステイがあります。

これらを単独または組み合わせて使うことによって、患者さんとの適切な距離をおくのです。


いつも一緒にいると喧嘩になるけれど、たまに会うくらいだと優しくできるってことありません?

そういうことです。


大した用事もないのに預かってもらうのに抵抗があるという方、気にしなくていいのです。

これは、介護者のための「レスパイト・ケア(wikipediaへ)」なのです。


そんなところに行ってくれないよという方、最初はちょっと大変かもしれません。

そもそも、認知症患者さんとは新しい環境を極度に嫌がる傾向があります。

ですが、何だかんだで結構行けるようになります(私の経験上、8割以上で問題ありません)。


特にデイサービスは多種多様なので、一つ目のところで相性が悪くても、いくつか体験するうちに(見学制度が大抵あります)相性のいいところが見つかります。

介護者のために、デイサービスとショートステイを活用しましょう。


ちなみに、これらのサービスを使うためには介護保険の申請が必要です(こちらも参照してみてください)。


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2015年5月14日 (木)

認知症の問題行動対策 ②対応編

認知症の問題行動対策として、薬物治療以上に重要なのが、「上手な対応」です。

これ無くして、問題行動の改善は期待できません。


「昔より怒りっぽくなった」ので、薬を使ってほしいという方が結構います。

でも、よくよく話を聞くと、患者さんが忘れたり失敗したりすると、介護者がそのたびに注意して、結局口論になるというのが真相でした。


認知症とは、「病気の進行によって、昔できていたことができなくなる」という特徴があります。

・病気の進行によって→患者さんのせいではない

・昔できていたことができなくなる→注意しても昔と同じようにはできない

ということです。


患者さん自身、「何かがおかしい」ということに気がついていますが、どうしたら良いのかわかりません。混乱の中にいるのです。

そのため、強い焦りや不安、恐怖といった負の感情にとりつかれやすい状態になっています。

ここに、介護者からの「なんでできないの?」「この前も注意したのに!」という言葉が浴びせられると、反動で攻撃的になってしまいます。

また、怒られたというエピソードは忘れてしまうのですが、イライラした感情は持続するので、その後の行動にも影響します。


患者さんは、失敗しないように気を付けることが非常に難しく、失敗を教訓にすることも困難です。

ですから、介護者は

・怒らない

・注意しない

・けなさない


ようにしてあげる必要があります。

最初は介護者の忍耐が必要ですが、そこを超えると win-win の関係になれるかもしれません。


患者さん自身、物事がうまくいかなくなっていることに苦しんでいます。

「出来なかったことを注意する」→「出来たことを褒める」という発想の転換も大切です。


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2015年5月12日 (火)

認知症の問題行動対策 ①薬物編

問題行動(周辺症状)の説明についてはこちら。

認知症で病院にいらっしゃる患者さんは、大きく分けて二通りです。

ひとつは、物忘れそのものを心配して来院する場合。

もう一つは、問題行動(周辺症状、BPSD)に困っている場合。

大学病院などの大きな病院には、物忘れそのものを心配して来院する場合が多いように思いますが、診療所になると、問題行動でこまってしまったという場合が多くなります。


問題行動への対策としては

①薬を使った方法
②薬を使わない方法


があります。

今回は ①薬を使った方法 について解説します。


問題行動に対して使える薬として

①漢方薬
②メマンチン
③抗精神病薬
④抗てんかん薬


などがあげられます。

それぞれについて、大まかな特徴を書きます。

①漢方
抑肝散がもっともよく使われています。ほかに、柴胡加竜骨牡蛎湯なんていうのも稀につかわれますが、これは漢方に詳しくないと、なかなか使わないかもしれません。
副作用は少ないのですが、効果も強くはありません。
たまにすごく効くことがありますが、全体としてはマイルドな印象です。

②メマンチン
メマリーという名前の薬です。
これはアルツハイマー病のくすりで、認知機能が低下しないようにするという目的でつかわれますが、同時に問題行動も軽減するというものです。
問題行動がある患者さんには、アリセプトではなく、メマリーを投与すると、症状が緩和できることがあります。
めまいの副作用がありますが、効果は漢方より強いと思います。

③抗精神病薬
これは、本来統合失調症(精神分裂病と言われていたもの)の薬です。
古くから使われている抗精神病薬(ハロペリドール/セレネースなど)と、非定型向精神病薬(リスぺりドン/リスパダール、クエチアピン/セロクエルなど)がありますが、実際には非定型向精神病薬が主につかわれます。
これらの薬は、強力な鎮静作用があるため、症状が強い場合に用いることがあります。
しかし、鎮静効果が強すぎたり、体の動きがわるくなったり(パーキンソン病のような症状)、糖尿病患者さんに使いにくかったりという問題があります。
ですから、他の薬でどうしても症状が抑えられない時に、慎重に副作用を確認しながら、少量ずつ投与する必要のある薬です。
また、レビー小体病の患者さんでは、特に体の動きが悪くなったり、意識が悪くなるなどの副作用が出やすいため、投与を避けるか、最大限に注意して投与する必要があります。

④抗てんかん薬
抗てんかん薬には気分を安定化させる作用があるものがあります(躁うつ病の治療薬として利用)。
この作用に期待して、バルプロ酸(デパケン)などを用いることがあります。
このくすりも、当たりはずれがある印象ですが、抗精神病薬と比較するとかなりマイルドです。
副作用は薬によってかなりことなりますが、多くの抗てんかん薬で、薬の濃度(体内の量)を測ったりするための定期的な血液検査が必要となります。


問題行動の程度にもよりますが、まずはメマンチンや漢方を使ってみて、改善しなければ抗精神病薬や抗てんかん薬をつかっていくという流れになります。

2015年5月11日 (月)

困っているなら地域包括支援センターに相談する

たとえば、一人で生活している家族が認知症になって、一人暮らしが難しくなります。

 

でも、同居するのも現実に難しいし、どうしたらよいかわからないということが起こるかもしれません。

 

そんな時にどこに相談するか?

 

地域包括支援センターには、こういったことに対する相談窓口が設けられています。

 

その業務内容は以下の通りです。

 

①介護予防ケアマネジメント事業
②総合相談支援事業
③権利擁護事業
④包括的・継続的ケアマネジメント事業

 

となっています。

 

ちょっとわかりにくいですが、高齢者の生活全般の支援を行っていくために中心となる機関です。

 

さらに平たく言うと、困ったときに色々と相談でき、さらに助けてくれる大変ありがたい機関なのです。

 

一人暮らしがむずかしくなったといった相談以外にも、介護・医療・福祉・権利問題などの相談ができます。

 

どこに相談したらよいかわからない、どうしたらよいかわからないときには、患者さんのお住いの地域包括支援センターへご相談するときっと良いことがありますよ。

 

ちなみに、利用料は無料です(市区町村が運営するため)。

2015年5月10日 (日)

患者さんに、「あなたは認知症です」という必要はあるか?

私は「ない」と考えています。

なぜか?

「あなたは認知症ですよ。」と伝えても、患者さん本人は、その瞬間落胆し、自尊心を損ね、家族は「やっぱりそうじゃないか」という反応をすることが多いのです。

でも、患者さんの認知機能は下がっているので、そのことを忘れてしまうか、覚えていたとしても自分で注意することができない。

また、認知症患者さんにとって、「嫌なことを言われた」こと自体を記憶するということは難しいのですが、「嫌な気分」は持続します。

であれば、伝えることで嫌な思いをさせる必要はないのではないかと考えています。

しかし、患者さんから「私は認知症ですか?」と聞かれたら、「認知症かどうかの判定は難しいのですが、多少もの忘れはありますので、これ以上悪くならないようにお薬などを使いましょう」と伝えています。


当然、ご家族には精確な病状を伝えるようにしています。

2015年5月 9日 (土)

介護保険申請時の調査員対策

タイトルからすると、ちょっと後ろめたい雰囲気もありますが、内容はそんなことありません。

 

介護保険申請を行う上で主治医意見書とならんで重要なのが、調査員による訪問調査です。

 

調査員の訪問時に結構困るのが、患者さんが頑張りすぎて、症状が軽く見積もられてしまうこと。

 

これ、結構多いのです。

 

患者さんに張り切るなと言ってもなかなか難しいので(一応、いつも通りにしてねとは言っておいてもいいと思います)、そんな時どうするかをお伝えします。

 

基本的には、主治医意見書を書いてもらうときに医師に伝えた内用をそのまま伝えれば大丈夫です。

 

それに加えて
①介助などにかかる時間に加えて、見守りにかかる時間も伝える。
②精神的負担について伝える。
③患者さんの前で言いにくければ、席を外してもらう。
④既に利用しているサービスで不満があれば、不満な点について伝える。
⑤頑張ればできるが、普段はしていないことについては、していないと伝える。

 

特に、患者さんが張り切ってしまった時には、しっかりと⑤を伝えましょう。
本人ができると主張しても、「普段は行っていません」と伝えてください。

 

出来るかどうかではなく、行っているかどうかが大切なのです。

 

介護度が1つ違うと、結構負担が変わりますので、しっかり対策しましょう!

 

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2015年5月 7日 (木)

認知症患者さんの住む世界

私たちは、日常生活を送るうえで特別意識しなくても、時間の流れや、自分がどこにいるか、また、過去にあった出来事などを覚えておくことができます。

これらの機能の重要性は、日常あまり気にされることはありませんが、認知症患者さんのように、これらの機能が失われてしまうと日常生活をおくることが大変困難になります。


自分のいる場所がわからなくなる(場所の見当識障害)
行ったことがない場所に、地図も持たずに出かけるようなものです。
どっちに行って良いか全くわからず、迷子になってしまいます。

時間が分からない(時間の見当識障害)
今が朝なのか夜なのかもわからず、時計を見てもすぐに何時だかわからなくなってしまいます。
日付も季節もわからず、適切な服を選ぶことも難しくなります。

記憶障害
ある時を境に、新しい記憶がインプットされにくくなっているため、極端に言えば最後に覚えたことが最新の出来事です。
2010年までの出来事までしか記憶になければ、患者さんにとって今は2010年となってしまいます。
2015年の今に5年分タイムスリップしたようなものです。

理解能力の低下
周りの人の会話についていけなくなり、何を話しているのかわからなくなってきます。


おそらく、ある程度しっかりした認知症患者さんは、言葉も場所もわからない外国に、突然タイムスリップして混乱している状態に近いのではないかと考えます。

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主治医意見書について(介護保険利用のために)

介護保険を使ってサービスを受けようとすると、主治医意見書が必要になります。

役所で介護保険の申請をするともらえる書類に主治医の名前を書く欄があり、ここに書いた医師のところへ主治医意見書作成の書類が市役所から直接届きます。


介護保険の認定は、軽い方から 要支援1<2<要介護1<2<3<4<5 という様になっています。

介護度が高い方が、より多くの種類や高い頻度でサービスが受けられます。

特に、入所を検討している場合、要介護3以上でないと、入所することが難しくなってきています。


この認定は、主治医意見書の内容と、調査員によるご家庭訪問の2つの結果を合わせて決定します。

アルツハイマー病の患者さんは取り繕いが大変うまく、短時間の調査員による聞き取りでは本当の認知機能が反映されないことがしばしばあります。

そのため、主治医意見書にどういう状態であるのかしっかり記載してもらう必要があります。


それでは、良い主治医意見書を書いてもらうために伝えておくべきことをお書きします。

①主治医意見書を依頼する医師に、あらかじめその旨を伝えておく。
(突然依頼書が来ても作成はできますが、精度がわるくなります)

②体の動きの悪いところや、行動できる範囲について伝える。
(足が弱っていてトイレは自分でできるが風呂は入れないなど)

③認知機能の低下について、困っていることや出来なくなったことを具体的に説明する。
(認知機能が悪くなってトイレの使い方がわからない、徘徊する、介護拒否があるなど)

④家族の介護負担の程度を伝える。
(介護のために出かけることもできない、介護に疲れてしまっているなど)

⑤金銭面での負担があれば、伝える。


これらをしっかりと伝えると、実像に沿った主治医意見書が作成してもらえる可能性が高まります。

あらかじめ紙に書いて渡しておくと、伝え忘れがなくて良いかもしれません。


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2015年5月 4日 (月)

ビタミンEとアルツハイマー病

抗酸化さようのあるビタミンEが認知症を予防できるかもと期待されています。

では、その実力はいかに?!

認知症の最も多い原因となっているアルツハイマー病について、ビタミンEが効くのかどうか調べてみました。

  

『Effect of Vitamin E and Memantine on Functional Decline in Alzheimer DiseaseThe TEAM-AD VA Cooperative Randomized Trial』

 

JAMA. 2014;311(1):33-44. doi:10.1001/jama.2013.282834.

 

によると、凄く効くわけではないようですが、ある程度効果があるかもしれないという感じです。

 

ビタミンEを1日2000 IU摂取すると、摂取しなかった人たちと比べて「日常生活動作」ができなくなる速度がゆっくりになったとのことです。

 

ただし、いくつかの注意点があります。

 

まず、基本的にアリセプトなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤という、アルツハイマー病でもっとも良く使われる薬は投与されていました。

 

ですので、ビタミンE単独での治療というわけではありません。

 

また、ビタミンEを使ったグループと、使わなかったグループ、さらにメマリーとビタミンEを併用したグループについて検討されていますが、いずれも認知機能は低下していました。

 

ビタミンEを使ったグループと比較して使わなかったグループでは、日常生活動作の低下が少なかったということであって、低下はしていたのです。

 

もう一つ、今回低下が少なかったのは日常生活動作の部分で、いわゆる「もの忘れ」の部分での抑制効果は認められなかった様です。

 

アルツハイマー病にサプリメントとしてビタミンEを摂取するのは良いのかもしれませんが、それだけではなく、きちんと治療を行ったうえで、ビタミンEを追加する余地があるというものなのではないかと思います。

 


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2015年5月 3日 (日)

抑肝散について

最近、認知症関連の番組や記事が至る所に出ています。

そのなかに時々「抑肝散」という漢方薬を見かけます。

患者さんからも認知症に効く漢方があるでしょ?と聞かれることもしばしばあります。

では、この抑肝散は何物なのでしょうか。

認知症患者さんでは、しばしば周辺症状(BPSD)とよばれる困った症状が出現します。

たとえば、怒りっぽいとか、興奮したりなんていう症状です。

このBPSDを改善してくれるのが抑肝散です。

ちなみに、この抑肝散はもともと子供の夜泣きのための薬であったそうです。

ですから、BPSDのない患者さんには抑肝散を処方することはありません

漢方というと、本当に効くのか?と思われる方も少なくないと思います。

少なくとも抑肝散については、BPSDを改善したという研究結果が得られていますのでBPSDでお困りの患者さんには試す価値があると思います。

経験上、効果はマイルドなため、激しいBPSDに抑肝散だけで対応するのは難しいと思います。

また、血圧が上がったり足がむくむという副作用(偽性アルドステロン症)を起こすことがあるため、投与期間が長くなる場合、こういった点に気を付ける必要があります(芍薬甘草湯のほうがさらにこういった副作用が多い)。



まとめ

「抑肝散は、認知機能を維持する効果はないけれど、問題行動で困っている患者さんには有効。ただし、効果はマイルド。」

2015年5月 2日 (土)

認知症の薬② NMDA受容体拮抗薬

今回は、NMDA受容体拮抗薬のお話です。

この薬はアリセプトなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とならび、アルツハイマー病を治療するうえで大切な薬です。

脳内には、アセチルコリンのほかにグルタミン酸という物質も神経伝達物質として存在しています。

ただし、アセチルコリンと違って、グルタミン酸はアルツハイマー病になると増えすぎて、脳内にノイズを発生させます。

NMDA受容体拮抗薬は、直接グルタミン酸を減らすことはありませんが、グルタミン酸がうまく働かないようにして、脳内のノイズを下げる役割があります。

この、NMDA受容体拮抗薬は、メマンチン(メマリー)一種類しかありません。

薬の特徴ですが、アルツハイマー病で大騒ぎしやすくなった患者さんに投与すると、穏やかになる傾向があります。

おそらく、ノイズが減って、必要ない刺激が減るためではないかと思います。

アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が元気のない人を活発にするのとは対照的です。

この2種類の薬を使い分けたり併用することで、患者さん本人の認知機能の維持と、家族や介護者の負担軽減を図ります。

メマンチンを使っても興奮が止まない場合は、次の一手を繰り出すこととなりますが、その話は、また後日。

2015年5月 1日 (金)

認知症の薬① アセチルコリンエステラーゼ阻害剤

 認知症の治療薬は、日本において現在4種類存在します。

その治療薬は大きく2つに分類できます。

①アセチルコリンエステラーゼ阻害剤
②NMDA受容体拮抗薬

いずれも、認知症(アルツハイマー病)治療においてとても重要な薬です。

今回は、①についてご説明します。

アセチルコリンエステラーゼ阻害剤には、ドネペジル(アリセプト)、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(イクセロン・リバスタッチ)が存在します。

アルツハイマー病では、脳の中に存在するアセチルコリンという物質が減少し、脳内の情報伝達がうまくいかなくなるという現象が起こっているため、アセチルコリンを分解する酵素を抑えれば、症状が改善するというものです。

このタイプの薬は、ぼーっとして元気がなくなるタイプの認知症患者さんに効きやすい傾向があります。逆に、興奮しやすい患者さんとの相性はいまいちです。

また、飲んでも物忘れが治るとか、改善するといった薬ではなく、進行抑制のための薬なので、目に見えて効果があるということは少ないです。効いてないと思って中断すると、急に物忘れがひどくなって、効いてたんだなと実感することもしばしばあります。

ですから、効果がないなと思っても途中でやめない方が良いでしょう。

アセチルコリンエステラーゼ阻害剤には3種類の薬がありますが、いずれも効果の点で大きな違いはありません(細かい使い分けはあるにはありますが、さほど重要ではありません)。

使い方としては、ドネペジルは1日1回内服、ガランタミンは1日2回内服、リバスチグミンは貼り薬で、1日1回張り替えるようになります。

ドネペジルについては、錠剤のほかにゼリー剤もあります。飲みこみが悪い患者さんには良いかもしれません。
患者さんの状態や、生活スタイルに合った薬を最初に選ぶと良いと思います。

治療が長期化すると途中から効果が弱くなることがあります。そういった場合には、他のタイプのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に変更することができます。

また、次回ご説明するNMDA受容体拮抗薬と併用できます。

アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、おとなしい患者さんを元気にする作用がある反面、怒りっぽくなったり、落ち着かなくなることもあるので、患者さんの症状を診ながら投与するかどうか検討する必要があります。
また、飲み始めの時に、一時的にお腹が緩くなるなどの症状が出ることがあります。

アセチルコリンエステラーゼ阻害剤を投与されて、副作用で困ったことがあったら、主治医に相談すると良いでしょう。

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