認知症の早期発見のために
認知症を早期発見するのは、案外難しいと考えています。
その理由を以下にあげます。
①自覚症状に乏しい
②多くの認知症はゆっくり進行するため、認知機能の低下に気がつきにくい
③認知症を発症しても、初期であれば家庭内のことはおおむね問題なくできるため、発症に気がつかない
④多少あやしいところがあっても年齢のせいにしがち
⑤早期の認知症は症状が軽く、かかりつけ医(認知症が専門でない)も診察時間内に見抜くのは困難
では、早期発見のためにはどのようなことに気を付ければよいでしょうか。
認知症の原因として最も多いアルツハイマー病では、早期から日付が分からなくなる傾向があります。
また、少し前のことを思い出すことが苦手になります。
ですから、今日の日付(できれば年・月・日・曜日)や、昨晩の献立などを聞いてみるというのは方法です。
ただし、献立についてはすべていえる必要はなく、高齢者であれば主なものが出てくれば良いと思われます。
認知症のもの忘れで特徴的なのが、エピソード記憶(体験したこと)の欠落です。
晩御飯を食べたはずなのに、食べたかどうかが分からないということがあれば、それはエピソード記憶の欠落です。
エピソード記憶の欠落があれば、認知症である可能性は高くなると考えられます。
認知症では物の名前が出にくくなるため、「あれ」や「それ」といった代名詞が増える傾向にあります。
日常的につかうものにおいて、代名詞を用いる場合は要注意です。
ただし、かかわりの深くない人物(テレビに出てくる人など)の名前は年齢とともに出にくくなるので、人の名前が出てこないからと言って認知症であるということは言えないと思われます。
料理の献立を考えることはとても複雑なことです。
レパートリーが減ったとか、料理にかかる時間が長くなったとか、味付けがおかしくなったということがあれば、認知機能の低下を疑います。
同じ話を何度もするというのも症状の一つであることがあります。
これは、以前に話をしたという記憶がなくなってしまうためと考えられます。
会話の流れについてこれない、取り繕いがみられる、などという症状も見られるようになります。
いずれも、この症状があったら即認知症だというものではありませんが、認知症を早期に発見するためには、これらの症状がないか注意深く観察する必要があります。
そして、これらのサインを見つけたら、物忘れ外来に一度ご相談を。
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