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2015年6月29日 (月)

アルツハイマー病の最期

アルツハイマー病は、認知症を起こす病気として最も多いものです。

 

この病気は進行性で、現在の医学では完全に止めることはできません

 

進行していくと、物忘れだけでなく、服の着方が分からなくなったり、家族が分からなくなったり、最後には体の動かし方が分からなくなってしまうこともあります。

 

今回は、アルツハイマー病の最期についてご説明します。

 

アルツハイマー病の多くは、少し前のことを忘れてしまうもの忘れや、日付が分からなくなるといった症状で発症します。

 

これらの症状は、数年かけて徐々に進行していきます。

 

進行に伴って、BPSDという問題行動(周辺症状)が出現することがあります。

 

BPSDで代表的なものは、被害妄想や怒りっぽくなる(易怒性)、徘徊などです。

 

発症して5年から10年くらいすると、さらに症状し、家族のことが分からなくなる、服が着れなくなるなどの症状が出現します。

 

また、このころから徐々に体の動きが悪くなってくることもあります。

 

これは、体を動かす働きをする部分の脳が萎縮することによって起こります。

 

さらに進行すると、物事に対する反応が乏しくなり、自力で起きていられず寝たきりとなったり、食事をとることもできなくなってしまいます

 

実際には、進行の程度に個人差がかなりあり、極めてゆっくり進行することもあれば、これよりも早いこともあります。

 

傾向として、若年発症の方が進行が早く、高齢発症の場合はゆっくりな傾向があります。

 

実際にはほとんどの患者さんが高齢発症であるため、完全に寝たきりになる前に他の病気などで生涯を終えることが多いと思われます。

アルツハイマー病は、物忘れの病気ではありますが、病気の性質上、最後にはどうしても自宅で介護することが困難となります。

もし、進行してしまったアルツハイマー病を介護されているのであれば、入院や入所という方法も、とても大切であると思います。

2015年6月24日 (水)

難聴を放置しないで

高齢になると、高い音が聞き取りにくくなってきます。
これは、ある程度は仕方のないことですが、進行すると、日常的な生活にも支障が出てきます。

私も外来で難聴を伴った患者さんを多く診察しますが、ご家族には、できれば補聴器をとお話するようにしています。


では、なぜでしょう。


難聴があると、認知機能が早く低下するという報告がいくつかあります。

その低下速度は、MMSEの検査成績では41%増しだったとのことです。

結構早いですよね。


難聴がなぜ認知機能を低下させるかについて、その原因ははっきりわかっているわけではありません。

しかし、難聴によって、社会的に孤立してしまったり、認知機能に負荷をかけてしまうことが原因ではないかと考えられています。

難聴があって周りの話していることが良く聞こえないと、会話にも加われず、孤立して認知機能が下がってしまうことは想像に難くありませんね。

Frank R. Lin et al. Hearing Loss and Cognitive Decline in Older Adults. JAMA Intern Med. 2013;173(4):293-299.


補聴器を使うことによって、認知機能の低下がどの程度防げるかは定かではありませんが、「しっかり聞こえる」というのは、日常生活を維持するうえでとても大切です。

ですから、難聴を放置したままにせず、耳が遠くなったなと思ったら、まず耳鼻科を受診してください。

ちなみに、時々、耳垢がつまっていただけなんてこともあるようですよ。


http://kumeiin.jp/

2015年6月18日 (木)

シロスタゾール(プレタール)はアルツハイマー病を防げるか?

シロスタゾールという薬がアルツハイマー病の進行を抑制できるかもしれないという報告があります。

 

シロスタゾールは、もともと脳梗塞などの血管が詰まることによって起こる病気の予防薬です。

 

くすりの働くメカニズムは全く異なりますが、アスピリン(バイアスピリン)やクロピドグレル(プラビックス)などと使う目的は大体同じです。

 

では、なぜシロスタゾールがアルツハイマー病に効くかもしれないといわれているか。

 

シロスタゾールはアルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドベータ(Aβ)という蛋白の蓄積を防ぐ効果が、動物実験で示されていることがあげられます。

 

また、シロスタゾールを投与したアルツハイマー病患者の認知機能が、投与しなかった患者より低下しにくかったという報告もあります(Ihara M, Nishino M, Taguchi A et al.:Cilostazol add-on therapy in patients with mild dementia receiving donepezil: a retrospective study. PLoS One. 2014 Feb 26;9(2):e89516.)

 

では、どのくらい効くのか?

 

論文によると、MMSEが22~26点の軽いアルツハイマー病の患者さんにとっては、かなり効果的(80%進行を抑制)となっています。

 

しかし、21点以下では、効果は乏しかったとのことです(有効性を証明できていません)。

 

ただ、ちょっと気になるのが、この研究は、アルツハイマー病の患者さんを、ドネペジル(アリセプト)単独か、シロスタゾール併用の二つのグループに分けて追跡したわけではなく、振り返ってみたら、そうであったという研究だという点です。

 

ですから、もしかしたらシロスタゾールを使った理由が別にあって、その理由によって進行が遅くなった(シロスタゾールが効いたわけではない)ということもあり得るのです。

 

たとえば、シロスタゾール併用群は、実は脳梗塞合併の混合性認知症で、シロスタゾールによって脳梗塞の再発が抑えられたために、結果として認知機能が維持されたということも考えられます。

 

今後、さらなる研究が行われれば、本当にシロスタゾールがアルツハイマー病に効果があるのかがはっきりすると考えられます。

2015年6月15日 (月)

せん妄を抑えるには

高齢者が入院すると、せん妄という状態に陥ることがしばしば見らえます。

 

これは、決して稀なことではなく、日常的に頻繁に目にします。

 

せん妄についてはこちらを参照してください。

体調が改善することによってせん妄から解放されることがおおいのですが、せん妄を起こしたことを契機に認知機能が著しく低下することもあります。
(認知症があるとせん妄になりやすいし、せん妄を起こすと認知症が悪化すると考えられます)

 

せん妄の予防について、やはり、入院するような大きな病気にならないようにすることにつきます。

 

また、軽症での安易な入院は、認知機能やADL(Wikipedia 参照)の維持といった観点からはお勧めできません。

 

しかし、入院が必要な状態になってしまった場合、どうするか。

 

体調にもよりますが、

・ベッドからできるだけおりること。

 

・食事をできるだけ食べること。

 

・夜はちゃんと暗くすること。

 

・出来るだけ家族が顔を見せてあげること。

 

などで、ある程度改善できると思われます。

 

また、最近はラメルテオン(ロゼレム)という薬がせん妄の予防に効果があると考えられています。

 

このロゼレムは、睡眠剤として開発されたもので、夜が来たことを教えてくれるメラトニンというホルモンと同じような作用をします。

 

通常の睡眠剤のように、強制的に寝かせるタイプのものではないため、効果はマイルドですし、速効性も期待できません。

 

ですが、長期に投与すると、徐々に一日のリズムができてきて、昼夜逆転や不眠を改善することができるとされています。

 

この、ラメルテオンの夜が来たことを教えてくれるという作用が、昼夜逆転などの症状を呈するせん妄の予防に有効なのかもしれません。

 

また、ラメルテオンは認知症患者さんの不眠にも有効性が示されています。

 

処方した患者さん全員に効果があるとは思いませんし、強力な薬だとも思いませんが、ラメルテオンは昼夜逆転や高齢者の不眠にある程度の効果が期待できると考えています。

2015年6月12日 (金)

高脂血症治療薬(スタチン)は認知症に効くか?

スタチンという薬は、高脂血症(コレステロール異常症)にもっとも良く使われています。

古くはメバロチンから始まり、リピトール、クレストール、リバロなどの強力なものが現在主流となっています。

これらのスタチンという薬は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を強力に下げることができ、動脈硬化の抑制に効果的であることが分かっています。


最近、スタチンが認知症にも効果があるかもしれないといわれており、研究がおこなわれています。


現在までのところ、アルツハイマー病に対して進行抑制の効果が認められたという報告もありますが、最近ではスタチンはアルツハイマー病の進行抑制には役立たないのではと言われています(はっきりとした決着はついていません)。

しかし、動脈硬化のなれの果てである脳梗塞によって引き起こされる脳血管性認知症では、スタチンの投与によって発症や進行抑制効果が期待できると考えられます。


高齢者の認知症の多くは、純粋なアルツハイマー病ではなく、脳血管性認知症の要素が多分にあるため、スタチンを投与してLDLコレステロールをきちんと下げておくことは、認知機能の温存につながる可能性があると考えられます。


認知症の進行抑制のためには、アリセプトなどを内服するだけでなく、高脂血症などの生活習慣病の管理も大切というわけです。

2015年6月 5日 (金)

聞き流すことの大切さ

患者さんと介護者の間で喧嘩が絶えなくてこまっているという相談をしばしば受けます。

 

解決策の一つとして、抗精神病薬などを使うこともありますが、介護者の方には、患者さんと正面から向き合いすぎないようにお願いしています。

通常、私たちは同じことを何度も聞かされると、飽きてきます。

よほどお気に入りの物語も毎日聞かされていたら飽きますよね。

それでも、しつこく何度も聞かされるとイライラして、つい怒りっぽくなりますよね。
これは、当たり前のことです。


残念ながら認知症の患者さんは記憶が保たれないので、いくら注意しても何度も同じことを言ってきます。

これをまともに聞いていたら、疲れてしまいます。

介護者は疲れて怒りっぽくなります。そうすると、患者さんも攻撃的になります。

そうすると、介護者はさらに怒りっぽくなって… こうして悪循環が生まれます。

 

なので、言い方は悪いのですが、正面から向き合わないようにするのです。

 

「聞き流す」ということです。

 

この悪循環を断ち切れるのは、介護者だけです。

そのために、「聞き流す技術」を会得していただくのです。

 

聞き流す技術にくわえて、「気にしない技術」を会得できればさらに効果的です。

 

患者さんが、勘違いしていたり、間違ったことをいっても、気にしないのです。

 

聞き流しながら、適当に相槌をうって、間違ったことをそのままにしておいて、気にしないでいるのです。

 

まともにやりあって、間違ったことを注意して、直らないものを正そうとするから、そこに摩擦が生まれ、喧嘩になるのです。

 

最初から、聞き流し、気にしなければ、大きな喧嘩になることもずっと少なくなるのです。

抗精神病薬による治療は一定の効果があります。

でも、それだけでは解決しません。

介護者の対応こそが、最大の対策なのです。

2015年6月 2日 (火)

糖尿病と認知症の深い関係

糖尿病(2型)と認知症には深いかかわりがあることがわかっています。

久山町研究という、日本で行われた大規模なものをはじめ、様々な研究において、糖尿病患者さんは認知症を発症しやすいということが分かっています。

その頻度ですが、脳血管性認知症は、普通の人の3倍、アルツハイマー病は2倍といわれています。

かなり高いですね。

糖尿病が脳血管性認知症の原因となる理由ですが、糖尿病は動脈硬化を引き起こす原因の一つです。そのため、動脈硬化によって血管が詰まって、脳梗塞を発症し、脳血管性認知症を発症すると考えられます。

アルツハイマー病については、脳内のインスリン濃度の低下や、微細な炎症などがかかわっていると考えられています。

また、最近では、糖尿病患者さんの中に、アルツハイマー病ではない新たなタイプの認知症(糖尿病性認知症)が隠れていると考えられており、研究がすすめられています(H.Hanyu. Diabetes mellitus and dementia. Brain Nerve. 2014 Feb;66(2):129-34.

糖尿病性認知症は、インスリン注射を行っており、糖尿病にかかっている期間が長い高齢者に多く、脳血流シンチグラフィ(SPECT)検査でアルツハイマー病に特有の血流低下を示さない特徴があります。また、進行も緩やかな傾向があります。

臨床体験として、血糖値のコントロールにて認知症症状が改善することもしばしばあります。

糖尿病で、血糖のコントロールがちょっとわるい、そして、物忘れが出てきたという方、もしかしたら糖尿病性認知症かもしれません。

糖尿病は予防したり、治療によって良好な血糖を保つことができます。

認知症の発症予防のためにも、糖尿病にならないように、また、なったとしてもしっかり治療を行うようにする必要があります。

http://kumeiin.jp/

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