聞き流すことの大切さ
患者さんと介護者の間で喧嘩が絶えなくてこまっているという相談をしばしば受けます。
解決策の一つとして、抗精神病薬などを使うこともありますが、介護者の方には、患者さんと正面から向き合いすぎないようにお願いしています。
通常、私たちは同じことを何度も聞かされると、飽きてきます。
よほどお気に入りの物語も毎日聞かされていたら飽きますよね。
それでも、しつこく何度も聞かされるとイライラして、つい怒りっぽくなりますよね。
これは、当たり前のことです。
残念ながら認知症の患者さんは記憶が保たれないので、いくら注意しても何度も同じことを言ってきます。
これをまともに聞いていたら、疲れてしまいます。
介護者は疲れて怒りっぽくなります。そうすると、患者さんも攻撃的になります。
そうすると、介護者はさらに怒りっぽくなって… こうして悪循環が生まれます。
なので、言い方は悪いのですが、正面から向き合わないようにするのです。
「聞き流す」ということです。
この悪循環を断ち切れるのは、介護者だけです。
そのために、「聞き流す技術」を会得していただくのです。
聞き流す技術にくわえて、「気にしない技術」を会得できればさらに効果的です。
患者さんが、勘違いしていたり、間違ったことをいっても、気にしないのです。
聞き流しながら、適当に相槌をうって、間違ったことをそのままにしておいて、気にしないでいるのです。
まともにやりあって、間違ったことを注意して、直らないものを正そうとするから、そこに摩擦が生まれ、喧嘩になるのです。
最初から、聞き流し、気にしなければ、大きな喧嘩になることもずっと少なくなるのです。
抗精神病薬による治療は一定の効果があります。
でも、それだけでは解決しません。
介護者の対応こそが、最大の対策なのです。
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