認知機能を低下させるかもしれない薬
風邪薬を飲むと、眠気がでたり、集中力がさがるといった経験のある方は少なくないと思います。
その状態で作業をすると、いつもよりミスが増えるのは当然ですね。
これが、高齢者であったらどうでしょうか。
認知機能に余裕のある高齢者であれば大丈夫かもしれませんが、そうでない場合は、日常生活でもミスが目立って、認知症になってしまったと思われるでしょう。
風邪薬や鼻水止めの成分には、抗ヒスタミン作用があるのですが、これが眠気の元となっています。
また、これらの薬には抗コリン作用というものもあり、これが認知機能を低下させる原因となります。
コリンというのは、脳内の神経伝達物質で、脳細胞が信号をやり取りするために必要な物質ですが、認知症では、コリンが減少しているといわれています。
主要なアルツハイマー病の治療薬(アリセプト、レミニール、イクセロン、リバスタッチ)は、脳内のコリンを増やすことによって認知機能を高めます。
しかし、抗コリン薬を飲むと、逆のことが起こり、認知機能が低下してしまいます。
また、抗コリン作用のある薬を飲み続けていると、認知症になりやすいという報告も出ています。
(Gray, SL. et al. 2015. Cumulative use of strong anticholinergics and incident dementia: a prospective cohort study. JAMA. 175(3):401-7.)
抗コリン作用のある薬は、以下のとおりです(リストは抗コリン作用のある薬の一部です)
- 古いタイプのアレルギー薬(第一世代抗ヒスタミン薬)
- 主要な頻尿(過活動性膀胱)の薬
- 抗うつ薬の一部(三環系抗うつ薬)
- 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)
- 抗パーキンソン病薬の一部(ビペリデンなど)
高齢者でこれらの薬を内服している場合、本当に必要か、他の薬に変更できないか検討しても良いと思われます。
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