アメリカではなぜ認知症は減少しているのか?
現在、日本においては、アルツハイマー病を含む認知症の患者数(絶対数)も認知症を発症する人の割合(有病率)も増加しており、国を挙げての対策が必要な状態となっています。
そんな中、アメリカでは認知症を発症する人の割合が減っているという報告が出ています。
(JAMA Intern Med. 2017;177(1):51-58.)
これによりますと、アメリカにおける65歳以上(21,000人以上が対象)の認知症の有病率は、2000年では11.6%であったが、2012年には8.8%まで大幅に減少したとされています(日本においては2012年時の有病率は15%程度)。
この数字が、どの程度正確であるかについて、疑問の余地がありますが、同様の報告もでてきていることから、少なくとも認知症の有病率は低下していると考えられます。
では、なぜ有病率が減少しているのでしょうか。
この研究では、教育期間の延長が認知症を予防しているのではないかと述べています。
日本においても、大学進学率はおおむね右肩上がりで、近年では50%を上回っています。これは50年前の約2倍の数値です。
ということは、将来的に日本においても認知症の有病率が低下する可能性があります。
ただし、日本の場合は非常に速い速度で高齢化が進行しているため、有病率が下がっても、認知症患者数は増加するのではないかと思います。
高学歴=認知症になりにくい
その反面
高学歴の人が認知症になると、進行が早い
ことも知られています。
(Neurology October 23, 2007 vol. 69 no. 17 1657-1664)
高学歴の人は脳内の変化(萎縮など)が進行しても、なかなか症状として現れない反面、いざ症状が出現したときは、脳内の変化がかなり進行した状態となっています。そのため、高学歴でない認知症患者さんと比較し、いざ発症してしまうと進行が早いのではないかと考えられます。
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