物忘れが出たら早めの受診が大切な理由
以前、認知症の早期発見の重要性 でアルツハイマー型認知症の早期発見、早期治療の重要性について書きました。
今回は、別の視点から早期発見の重要性をご説明したいと思います。
今ではテレビや新聞で認知症の言葉を見ない日はないというくらい、認知症が取り上げられて、啓蒙がなされている効果か、早期に受診される物忘れ患者さんは増えている印象です。
しかし、物忘れ外来を行っていると、まだまだ、もっと早く受診していてくれていたらと思うことがあります。
物忘れ外来に治る可能性のある認知症患者さんが来ることがあります。
その頻度は5%程度と多いとはいえませんが、絶対に見落とせないケースです。
そのなかでも比較的多いのが特発性正常圧水頭症です。
病気の細かい説明は省略させていただきますが、認知機能の低下に加え、歩行障害と失禁を伴うことがあります。
診断は、頭部MRIやCTを行うことで比較的容易に行うことができます。
治療については手術が必要となりますが、脳外科の手術の中では短時間で終わるものとなります。
しかし、症状があまりに進行してしまうと、完全には治らなかったり、治療の効果が得られないこともあります。
続いてビタミン欠乏症についてご説明します。
ビタミンB12や葉酸は、欠乏すると認知機能の低下を引き起こします。
栄養豊富な現代においてビタミン欠乏が起こるものかと疑問を持たれるかもしれませんが、高齢者では胃腸の機能低下によってビタミン欠乏症がおこることが稀ではありません。
胃の手術(特に全摘出)をされている場合は要注意です。
これらについても早期であれば治る可能性がありますが、そのまま放置されると、神経変性が進行し、その後ビタミンを補充しても十分な回復は得られません。
場合によっては手足の感覚や運動の麻痺を起こすことがあります。
甲状腺機能低下症も認知症の様な症状を認めることがあります。
特に、意欲の低下やボーっとした感じとなります。
血液検査で容易に診断できますし、内服治療で治療ができるため、見落とせない疾患の一つです。
当院では1年に1~2件と稀ではありますが、脳腫瘍による認知症も見られます。
年齢や体力にもよりますが、認知機能の低下という症状がある場合は可能な限り早期に手術を行う必要があります。
いずれの治る可能性のある認知症でも、治療が遅れればその分回復に時間がかかったり、完全にまたは全く回復しなくなります。
これらの疾患について、当院では直近の画像データがない場合は、必ず頭部の画像検査(MRIやCT)を検査病院へ依頼し、また、血液検査にてビタミンB12、葉酸、甲状腺機能の測定を行っています。
治らないことが多い認知症だからこそ、数少ない治る可能性のあるものを見落とさないように注意しています。
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