2023年1月28日 (土)

出版物のご案内

認知症の介護をされている方が、アマゾンから電子書籍を出版されました!

https://www.amazon.co.jp/dp/B0BR8B8NXF

私(久米一誠)も、専門医として寄稿させていただいております。

1月28日(土)17:00~31日(火)16:59まで4日間無料キャンペーンが実施されておりますので、是非ご一読いただければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

2021年6月 8日 (火)

アルツハイマー病の新薬アデュカヌマブ

2021年6月8日に、アルツハイマー病の新薬であるアデュカヌマブがアメリカFDAの承認を得ました。

従来のアルツハイマー病治療薬(ドネペジルなど)は、神経細胞の脱落によって減少した脳内神経伝達物質であるアセチルコリンを増やすことによって、減少した神経伝達を回復させるというものでありましたが、新薬であるアデュカヌマブはアルツハイマー病の原因物質と考えらえるアミロイドβを除去することによって神経細胞の脱落そのものを抑制し、認知機能の維持を目指すものです。

この作用から、アデュカヌマブはアルツハイマー病に進行すると考えられる軽度認知障害や、初期のアルツハイマー病の時期から投与しないと効果が期待できないと考えられます。よって、より一層、軽度の状態で診断していく必要があります。MMSEや長谷川式では反映されない程度のきわめて初期から治療開始する必要があるかもしれません(私見ですが、長谷川式でしばしば用いられる20点以下という認知症の基準では十分早いとは言えないと考えています)。

高齢者のアルツハイマー病においては、純粋なアルツハイマー病はあまり多くなく、血管性認知症やそのほかの要因が複合していることが多いため、アデュカヌマブの効果は十分に得られない可能性があります。

もう一つ、アミロイドβがアルツハイマー病と関連している事は間違いないと考えられていますが、アミロイドβが神経を損傷させる原因物質かどうかは定かではないということです。これについては、アデュカヌマブが広く用いられ始めたときに、その効果がどの程度得られるのかである程度判断できるのではと思います。

いろいろと書きましたが、待望の新薬ですので、私もその効果に期待しています。今後発表されるであろう論文を追跡していきたいと思います。

 

医療法人社団 久米医院

http://kumeiin.jp/

2021年3月11日 (木)

新型コロナに感染するリスクとデイサービスの中断

今回書く内容については、科学的な根拠はなく、個人的な印象によるものですのでご了承ください。

 

新型コロナの流行により、自主的にデイサービスをお休みしたり、施設内発症で休止したりといった理由で長期にデイサービス利用を中断された患者さんが散見されています。

 

デイサービス利用を中断された患者さんのうち、一部のご家族様から、「昼夜逆転」「歩行機能の低下」「意欲の低下」「認知機能低下の進行」などの悪影響が認められたという訴えがありました。

そのため、中には早々にデイサービスへの通所を再開された方もおられました。

 

日々、認知症を診療していると、デイサービスへ継続して通所することによる認知機能や身体機能への好影響を実感しておりますが、中断することによってその好影響が早期に失われてしまう可能性があると考えています。

 

繰り返しとなりますが、この話については、統計をとっておりませんので、個人的感想の域を出ません。

新型コロナの感染リスクとデイサービスへの通所について、ワクチン接種が行われるまでは、どちらが良いか個人個人で判断していただければと思います。

2020年5月19日 (火)

認知症と合併症

高齢になると、複数の病院に通院し、多くの薬を内服するようになることが、しばしばあります。

さらに、物忘れが気になり始めて物忘れ外来に通院するようになると、ご本人やご家族の負担が増大することとなります。

当院の認知症外来には、内科的な合併症を持った患者様が非常に多く、中には物忘れ自体はほとんどありませんが、複数の内科通院を一本化するために通院されている患者様もいらっしゃいます。

認知症は身体の状態が悪化すると、つられて悪化することもあります。また、入院すると急激に悪化することがあるため、認知機能の維持には良好な身体機能の維持は欠かせません。

すべての内科疾患に対応できるわけではありませんが、内科通院中で物忘れがある、または物忘れは大したことないけれど複数の病院に通院するのが大変という方は、一度当院の認知症外来(老年外来)にご相談ください。

少しでも、皆様の負担が軽減されるように頑張ります。

 

Cog

2018年12月 4日 (火)

物忘れが出たら早めの受診が大切な理由

以前、認知症の早期発見の重要性 でアルツハイマー型認知症の早期発見、早期治療の重要性について書きました。


今回は、別の視点から早期発見の重要性をご説明したいと思います。


今ではテレビや新聞で認知症の言葉を見ない日はないというくらい、認知症が取り上げられて、啓蒙がなされている効果か、早期に受診される物忘れ患者さんは増えている印象です。

しかし、物忘れ外来を行っていると、まだまだ、もっと早く受診していてくれていたらと思うことがあります。

物忘れ外来に治る可能性のある認知症患者さんが来ることがあります。

その頻度は5%程度と多いとはいえませんが、絶対に見落とせないケースです。




そのなかでも比較的多いのが特発性正常圧水頭症です。

病気の細かい説明は省略させていただきますが、認知機能の低下に加え、歩行障害と失禁を伴うことがあります。

診断は、頭部MRIやCTを行うことで比較的容易に行うことができます。

治療については手術が必要となりますが、脳外科の手術の中では短時間で終わるものとなります。

しかし、症状があまりに進行してしまうと、完全には治らなかったり、治療の効果が得られないこともあります。




続いてビタミン欠乏症についてご説明します。

ビタミンB12や葉酸は、欠乏すると認知機能の低下を引き起こします。

栄養豊富な現代においてビタミン欠乏が起こるものかと疑問を持たれるかもしれませんが、高齢者では胃腸の機能低下によってビタミン欠乏症がおこることが稀ではありません。

胃の手術(特に全摘出)をされている場合は要注意です。

これらについても早期であれば治る可能性がありますが、そのまま放置されると、神経変性が進行し、その後ビタミンを補充しても十分な回復は得られません。

場合によっては手足の感覚や運動の麻痺を起こすことがあります。




甲状腺機能低下症も認知症の様な症状を認めることがあります。

特に、意欲の低下やボーっとした感じとなります。

血液検査で容易に診断できますし、内服治療で治療ができるため、見落とせない疾患の一つです。




当院では1年に1~2件と稀ではありますが、脳腫瘍による認知症も見られます。

年齢や体力にもよりますが、認知機能の低下という症状がある場合は可能な限り早期に手術を行う必要があります。




いずれの治る可能性のある認知症でも、治療が遅れればその分回復に時間がかかったり、完全にまたは全く回復しなくなります。


これらの疾患について、当院では直近の画像データがない場合は、必ず頭部の画像検査(MRIやCT)を検査病院へ依頼し、また、血液検査にてビタミンB12、葉酸、甲状腺機能の測定を行っています。


治らないことが多い認知症だからこそ、数少ない治る可能性のあるものを見落とさないように注意しています。

2017年11月20日 (月)

当院での物忘れ外来受診の流れ

当院では、水曜日の午後に物忘れ外来を行っています

当院における受診の流れをご説明します。



電話(042-335-1515)で予約をお願いします。


かかりつけ医からの紹介状(なければ薬手帳など)をご用意ください。


初回診察時は、予約時間の30分前にご来院ください。


初回診察では、問診、心理検査、血液検査、心電図、胸部レントゲンを行います。


頭部MRI または CT は、検査病院にて行います。
初回診察時に、当院から検査病院へ予約を行います。
送迎付きの検査病院をご紹介することも可能です
(遠方の場合は対象外となる地域もあります)。


検査後、1~4週間で結果説明となります。


その後は、症状に合わせておおむね1か月ごとの診察となります。




こちらも併せてお読みいただければ、参考になるかと思います。

2017年10月13日 (金)

アメリカではなぜ認知症は減少しているのか?

現在、日本においては、アルツハイマー病を含む認知症の患者数(絶対数)も認知症を発症する人の割合(有病率)も増加しており、国を挙げての対策が必要な状態となっています。


そんな中、アメリカでは認知症を発症する人の割合が減っているという報告が出ています。

JAMA Intern Med. 2017;177(1):51-58.)


これによりますと、アメリカにおける65歳以上(21,000人以上が対象)の認知症の有病率は、2000年では11.6%であったが、2012年には8.8%まで大幅に減少したとされています(日本においては2012年時の有病率は15%程度)。


この数字が、どの程度正確であるかについて、疑問の余地がありますが、同様の報告もでてきていることから、少なくとも認知症の有病率は低下していると考えられます。


では、なぜ有病率が減少しているのでしょうか。


この研究では、教育期間の延長が認知症を予防しているのではないかと述べています。


日本においても、大学進学率はおおむね右肩上がりで、近年では50%を上回っています。これは50年前の約2倍の数値です。


ということは、将来的に日本においても認知症の有病率が低下する可能性があります。


ただし、日本の場合は非常に速い速度で高齢化が進行しているため、有病率が下がっても、認知症患者数は増加するのではないかと思います。


高学歴=認知症になりにくい


その反面


高学歴の人が認知症になると、進行が早い


ことも知られています。

Neurology October 23, 2007 vol. 69 no. 17 1657-1664)


高学歴の人は脳内の変化(萎縮など)が進行しても、なかなか症状として現れない反面、いざ症状が出現したときは、脳内の変化がかなり進行した状態となっています。そのため、高学歴でない認知症患者さんと比較し、いざ発症してしまうと進行が早いのではないかと考えられます。

久米医院

2017年3月26日 (日)

認知症の問題行動が出現したら確認しておきたいこと

認知症患者さんを介護するときに、介護者を悩ますのが問題行動。

 

もの忘れだけの患者さんと、周辺症状を伴った患者さんの介護では、その大変さが全く異なります。

 

問題行動(行動心理症状やBPSDとも呼ばれる)には、暴力、暴言、徘徊、帰宅願望、怒りっぽいといった激しい症状から、うつ、拒食、不安といったものまであり、その対応方法は患者さん事に異なります。

 

問題行動の対応方法については、以前にもお書きしましたが、今回は、問題行動が出現した時に必ず確認しておきたいことをお伝えします。

 

認知症の問題行動対策 ①薬物編

 

認知症の問題行動対策 ②対応編

 

問題行動は、患者さん自身に訴えたいことがあるけれど、それが上手く表現できないときに起こりやすい傾向があります。


ですから、問題行動が出現した場合には、身体や環境に異常が起こっていないか確認する必要があります。


・身体の異常
便秘、痛み、肺炎などの感染症などの異常が出現していることがあります。病院で異常がないか診てもらいましょう。

・薬の影響
新しく始めた薬や中断した薬がないか確認しましょう。

・不適切な環境
暑すぎたり、寒すぎたり、うるさすぎたりしていないか確認しましょう。

・不適切な介護
だます、できる事をさせない、子ども扱いをする、急がせる、無視する、無理強いをする、非難するなどの扱いをしていないか確認しましょう。


~対策~

・身体の異常や薬の影響
病院に相談しましょう。実際に、ある日を境に問題行動が出現した患者さんが、実は肺炎だったということもありましたし、新しく始めた薬をやめたら治まったということもありました。

・不適切な環境
室温の調節も大切ですが、模様替えや引っ越しを出来る限りしない、引っ越すときは、使い慣れた家具を持っていくというのも方法です。

・不適切な介護
介護の状態をもう一度振り返ってみてください。介護をしているあなたに問題がなくても、他の介護者に問題があるかもしれません。
介護者の負担軽減対策が必要になります。ケアマネージャーに相談しましょう。

2016年9月26日 (月)

認知機能を低下させるかもしれない薬

風邪薬を飲むと、眠気がでたり、集中力がさがるといった経験のある方は少なくないと思います。

その状態で作業をすると、いつもよりミスが増えるのは当然ですね。


これが、高齢者であったらどうでしょうか。

認知機能に余裕のある高齢者であれば大丈夫かもしれませんが、そうでない場合は、日常生活でもミスが目立って、認知症になってしまったと思われるでしょう。


風邪薬や鼻水止めの成分には、抗ヒスタミン作用があるのですが、これが眠気の元となっています。

また、これらの薬には抗コリン作用というものもあり、これが認知機能を低下させる原因となります。


コリンというのは、脳内の神経伝達物質で、脳細胞が信号をやり取りするために必要な物質ですが、認知症では、コリンが減少しているといわれています。


主要なアルツハイマー病の治療薬(アリセプト、レミニール、イクセロン、リバスタッチ)は、脳内のコリンを増やすことによって認知機能を高めます。

しかし、抗コリン薬を飲むと、逆のことが起こり、認知機能が低下してしまいます。


また、抗コリン作用のある薬を飲み続けていると、認知症になりやすいという報告も出ています。
(Gray, SL. et al. 2015. Cumulative use of strong anticholinergics and incident dementia: a prospective cohort study. JAMA. 175(3):401-7.)


抗コリン作用のある薬は、以下のとおりです(リストは抗コリン作用のある薬の一部です)

  • 古いタイプのアレルギー薬(第一世代抗ヒスタミン薬)
  • 主要な頻尿(過活動性膀胱)の薬
  • 抗うつ薬の一部(三環系抗うつ薬)
  • 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)
  • 抗パーキンソン病薬の一部(ビペリデンなど)



高齢者でこれらの薬を内服している場合、本当に必要か、他の薬に変更できないか検討しても良いと思われます。

2016年2月15日 (月)

認知機能評価には長谷川式やMMSEだけでなく、日常生活の変化も大切。

もの忘れについて少し興味があるという方は、長谷川式やMMSEといった、簡易的なもの忘れの評価法を知っている方も少なくありません。

 

この二つの検査は、国内で広く使われており、若干の違いはありますがおおむね同じ検査です。

 

脳の様々な機能が評価できますが、コンパクトで短時間ですむという特徴があり、日常の診療でも良く使われています。

 

しかし、外来診療を行っていると、MMSEの点数は低下していないけれど、以前より認知症が進行したと感じる介護者の方が比較的良くみられます。

 

特に多いのが、テレビのリモコンや家電の使い方が分からなくなったとか、切符の買い方が分からなくなったけれど、点数は下がっていないという例です。

 

私は、MMSEに複雑なものの使い方を評価する項目がなく、うまく認知機能を反映できないために、このような乖離が起こるのではないかと考えています。

 

そのため、私は外来でMMSEを行った後に、介護者の方に日常生活で出来なくなったことが増えていないか尋ねるようにし、検査で反映されない部分を補っています。

 

もし、これらの簡易的な認知機能テストであまり点数の低下がなくても、違和感を感じることがあれば、いつからどんなことができなくなったか記録しておくと、認知症の進行の評価に役立つと思います。

MMSEについてはこちらを参照してください。

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