出版物のご案内
認知症の介護をされている方が、アマゾンから電子書籍を出版されました!
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BR8B8NXF
私(久米一誠)も、専門医として寄稿させていただいております。
1月28日(土)17:00~31日(火)16:59まで4日間無料キャンペーンが実施されておりますので、是非ご一読いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
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よろしくお願いいたします。
2021年6月8日に、アルツハイマー病の新薬であるアデュカヌマブがアメリカFDAの承認を得ました。
従来のアルツハイマー病治療薬(ドネペジルなど)は、神経細胞の脱落によって減少した脳内神経伝達物質であるアセチルコリンを増やすことによって、減少した神経伝達を回復させるというものでありましたが、新薬であるアデュカヌマブはアルツハイマー病の原因物質と考えらえるアミロイドβを除去することによって神経細胞の脱落そのものを抑制し、認知機能の維持を目指すものです。
この作用から、アデュカヌマブはアルツハイマー病に進行すると考えられる軽度認知障害や、初期のアルツハイマー病の時期から投与しないと効果が期待できないと考えられます。よって、より一層、軽度の状態で診断していく必要があります。MMSEや長谷川式では反映されない程度のきわめて初期から治療開始する必要があるかもしれません(私見ですが、長谷川式でしばしば用いられる20点以下という認知症の基準では十分早いとは言えないと考えています)。
高齢者のアルツハイマー病においては、純粋なアルツハイマー病はあまり多くなく、血管性認知症やそのほかの要因が複合していることが多いため、アデュカヌマブの効果は十分に得られない可能性があります。
もう一つ、アミロイドβがアルツハイマー病と関連している事は間違いないと考えられていますが、アミロイドβが神経を損傷させる原因物質かどうかは定かではないということです。これについては、アデュカヌマブが広く用いられ始めたときに、その効果がどの程度得られるのかである程度判断できるのではと思います。
いろいろと書きましたが、待望の新薬ですので、私もその効果に期待しています。今後発表されるであろう論文を追跡していきたいと思います。
医療法人社団 久米医院
http://kumeiin.jp/
高齢になると、複数の病院に通院し、多くの薬を内服するようになることが、しばしばあります。
さらに、物忘れが気になり始めて物忘れ外来に通院するようになると、ご本人やご家族の負担が増大することとなります。
当院の認知症外来には、内科的な合併症を持った患者様が非常に多く、中には物忘れ自体はほとんどありませんが、複数の内科通院を一本化するために通院されている患者様もいらっしゃいます。
認知症は身体の状態が悪化すると、つられて悪化することもあります。また、入院すると急激に悪化することがあるため、認知機能の維持には良好な身体機能の維持は欠かせません。
すべての内科疾患に対応できるわけではありませんが、内科通院中で物忘れがある、または物忘れは大したことないけれど複数の病院に通院するのが大変という方は、一度当院の認知症外来(老年外来)にご相談ください。
少しでも、皆様の負担が軽減されるように頑張ります。
現在、日本においては、アルツハイマー病を含む認知症の患者数(絶対数)も認知症を発症する人の割合(有病率)も増加しており、国を挙げての対策が必要な状態となっています。
そんな中、アメリカでは認知症を発症する人の割合が減っているという報告が出ています。
(JAMA Intern Med. 2017;177(1):51-58.)
これによりますと、アメリカにおける65歳以上(21,000人以上が対象)の認知症の有病率は、2000年では11.6%であったが、2012年には8.8%まで大幅に減少したとされています(日本においては2012年時の有病率は15%程度)。
この数字が、どの程度正確であるかについて、疑問の余地がありますが、同様の報告もでてきていることから、少なくとも認知症の有病率は低下していると考えられます。
では、なぜ有病率が減少しているのでしょうか。
この研究では、教育期間の延長が認知症を予防しているのではないかと述べています。
日本においても、大学進学率はおおむね右肩上がりで、近年では50%を上回っています。これは50年前の約2倍の数値です。
ということは、将来的に日本においても認知症の有病率が低下する可能性があります。
ただし、日本の場合は非常に速い速度で高齢化が進行しているため、有病率が下がっても、認知症患者数は増加するのではないかと思います。
高学歴=認知症になりにくい
その反面
高学歴の人が認知症になると、進行が早い
ことも知られています。
(Neurology October 23, 2007 vol. 69 no. 17 1657-1664)
高学歴の人は脳内の変化(萎縮など)が進行しても、なかなか症状として現れない反面、いざ症状が出現したときは、脳内の変化がかなり進行した状態となっています。そのため、高学歴でない認知症患者さんと比較し、いざ発症してしまうと進行が早いのではないかと考えられます。
喫煙が健康に良くないということは、いまさら説明する必要のないことですが、認知機能にとっても良くないということが言われています。
かつて、喫煙はアルツハイマー病を予防するという論文が出されたこともあり、喫煙の数少ない利点だとされたこともありましたが、近年の研究では否定されています。
古い報告ですが(Lancet. 1998 Jun 20;351(9119):1840-3.)、これによると喫煙によってアルツハイマー病になるリスクは2倍程度になるといわれています。
また、喫煙は動脈硬化のリスクにもなるため、脳梗塞によって認知症になる危険性も増加するのではないかと思われます。
認知症予防のために、喫煙者の方は禁煙をお勧めします。
ただ、禁煙の成功率は低く、自力での成功率は10%を切るとも言われています(1年間の禁煙)。
現在は、保険診療で禁煙治療を受けることも可能ですので(当院でもできます)、禁煙補助薬を飲みながら禁煙する方が現実的かもしれません。
認知症を診断するために、頭部のMRIを行うことはほぼ必須であるといえます。
認知症の最大の原因であるアルツハイマー病患者さんでは、海馬の萎縮が目立つため、MRIで萎縮の有無を確認します。
脳血管性認知症であれば、脳梗塞があるため、これもMRIでよくわかります。
頭部MRIが、認知症を発症している患者さんにとって有用であることは、疑いの余地はないと思います。
では、発症予測という意味ではどうでしょうか。
フランスで行われた研究についてご紹介します。
1721人の認知症でない人にMRIを行い、さらに10年間追跡して、その間に認知症を発症したか調べた研究があります。
この研究では、認知症発症前のMRI画像を、統計的に解析しています。
アルツハイマー病でみられる海馬の萎縮についても検討されています。
しかし、残念ながら、認知症発症前に行われたMRIをもとに、10年のうちに認知症を発症するかどうかを予測することはできませんでした。
やっぱりそうだろうなというのが、率直な感想です。
アルツハイマー病に限って言えば、海馬の萎縮が目立つのは、認知症発症の時期とほぼ一致しているという印象です。
もし、発症を予測するのであれば、アミロイドβ(Aβ)を検出する検査の方が、おそらく有用であると思われます。
(アルツハイマー病の脳の変化は発症20年前から)
認知症の原因の半数以上を占めるといわれるアルツハイマー病ですが、この病気は脳の中にアミロイドベータ(Aβ)という物質が蓄積することが原因の一つであるといわれています。
Aβは脳細胞を障害する作用があり、これによって脳細胞が変性し(神経原線維変化)、アルツハイマー病を発症すると考えられています。
このAβはアルツハイマー病発症の20年前頃より蓄積が始まるといわれています。
遅れること10年ほどで、神経原線維変化が始まるといわれています。
神経原線維変化が始まった後、アルツハイマー病の特徴である海馬の萎縮が始まり、認知機能の低下が徐々に認められます。
海馬萎縮が顕著になるころに、認知機能の低下が著しくなり、アルツハイマー病を発症します。
アルツハイマー病で病院を受診するのは、アルツハイマー病という病気が完成してからということになります。
現在、アルツハイマー病の治療薬として用いることのできる薬は、いずれも症状を緩和するもので、アルツハイマー病の原因を食い止めたり、改善したりするものではありません。
何とか進行を少しでも遅らせるための治療しかないということです。
これに対して、Aβに対するワクチンなどの研究がおこなわれており、アルツハイマー病を根本から治そうという試みはありますが、まだ実用化されてはいません。
どのようにしたらAβが蓄積しないようにできるのか、はっきりしたことは分かっていませんが、微小な炎症などがかかわっている可能性が示唆されています。
また、高齢者の認知症はアルツハイマー病単独ではなく、微小な脳梗塞を合併していることが多いため、一般的に生活習慣病を予防するための食生活が有効かもしれません。
アルツハイマー病になるリスクを少しでも下げたいとお考えであれば、50歳くらいから食事や運動に気を付ける必要があると考えられます。
シロスタゾールという薬がアルツハイマー病の進行を抑制できるかもしれないという報告があります。
シロスタゾールは、もともと脳梗塞などの血管が詰まることによって起こる病気の予防薬です。
くすりの働くメカニズムは全く異なりますが、アスピリン(バイアスピリン)やクロピドグレル(プラビックス)などと使う目的は大体同じです。
では、なぜシロスタゾールがアルツハイマー病に効くかもしれないといわれているか。
シロスタゾールはアルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドベータ(Aβ)という蛋白の蓄積を防ぐ効果が、動物実験で示されていることがあげられます。
また、シロスタゾールを投与したアルツハイマー病患者の認知機能が、投与しなかった患者より低下しにくかったという報告もあります(Ihara M, Nishino M, Taguchi A et al.:Cilostazol add-on therapy in patients with mild dementia receiving donepezil: a retrospective study. PLoS One. 2014 Feb 26;9(2):e89516.)
では、どのくらい効くのか?
論文によると、MMSEが22~26点の軽いアルツハイマー病の患者さんにとっては、かなり効果的(80%進行を抑制)となっています。
しかし、21点以下では、効果は乏しかったとのことです(有効性を証明できていません)。
ただ、ちょっと気になるのが、この研究は、アルツハイマー病の患者さんを、ドネペジル(アリセプト)単独か、シロスタゾール併用の二つのグループに分けて追跡したわけではなく、振り返ってみたら、そうであったという研究だという点です。
ですから、もしかしたらシロスタゾールを使った理由が別にあって、その理由によって進行が遅くなった(シロスタゾールが効いたわけではない)ということもあり得るのです。
たとえば、シロスタゾール併用群は、実は脳梗塞合併の混合性認知症で、シロスタゾールによって脳梗塞の再発が抑えられたために、結果として認知機能が維持されたということも考えられます。
今後、さらなる研究が行われれば、本当にシロスタゾールがアルツハイマー病に効果があるのかがはっきりすると考えられます。
スタチンという薬は、高脂血症(コレステロール異常症)にもっとも良く使われています。
古くはメバロチンから始まり、リピトール、クレストール、リバロなどの強力なものが現在主流となっています。
これらのスタチンという薬は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を強力に下げることができ、動脈硬化の抑制に効果的であることが分かっています。
最近、スタチンが認知症にも効果があるかもしれないといわれており、研究がおこなわれています。
現在までのところ、アルツハイマー病に対して進行抑制の効果が認められたという報告もありますが、最近ではスタチンはアルツハイマー病の進行抑制には役立たないのではと言われています(はっきりとした決着はついていません)。
しかし、動脈硬化のなれの果てである脳梗塞によって引き起こされる脳血管性認知症では、スタチンの投与によって発症や進行抑制効果が期待できると考えられます。
高齢者の認知症の多くは、純粋なアルツハイマー病ではなく、脳血管性認知症の要素が多分にあるため、スタチンを投与してLDLコレステロールをきちんと下げておくことは、認知機能の温存につながる可能性があると考えられます。
認知症の進行抑制のためには、アリセプトなどを内服するだけでなく、高脂血症などの生活習慣病の管理も大切というわけです。
『ココナッツオイルが認知症にいい』という情報をしばしば耳にします。
ここでいう認知症はアルツハイマー病のことを指しているのですが、どうなのでしょうか。
結論から言うと、効くかどうか現時点で良く分かりません。
というのも、効果を裏付けるために必要な規模の研究がなされていないというのが、現実なようです(調べた範囲ではですが)。
いくつかの研究では、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸という成分が、体内でケトン体になり、これが脳細胞の栄養となるとか、ココナッツオイルの成分がアルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドベータの悪い作用を弱めるといったものがありました。
なので、一概に効果がないということもないと思われます。
ただし、劇的に効果があるというものではなさそうですし(劇的に効いたという1例報告はありましたが)、ココナッツオイルを摂取すればアルツハイマー病にならないということもないのではないかと思います。
ココナッツオイルを摂取するのは良いのですが、合併症(高血圧・糖尿病・コレステロール異常などの生活習慣病)を含めた治療をしっかりと受けたうえで、追加として行っていただきたいと思います。
もし、ココナッツオイルにきちんとした効果があったとしても、生活習慣病を放置していたら、きっと効果は弱まってしまうでしょう。
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