2017年10月13日 (金)

アメリカではなぜ認知症は減少しているのか?

現在、日本においては、アルツハイマー病を含む認知症の患者数(絶対数)も認知症を発症する人の割合(有病率)も増加しており、国を挙げての対策が必要な状態となっています。


そんな中、アメリカでは認知症を発症する人の割合が減っているという報告が出ています。

JAMA Intern Med. 2017;177(1):51-58.)


これによりますと、アメリカにおける65歳以上(21,000人以上が対象)の認知症の有病率は、2000年では11.6%であったが、2012年には8.8%まで大幅に減少したとされています(日本においては2012年時の有病率は15%程度)。


この数字が、どの程度正確であるかについて、疑問の余地がありますが、同様の報告もでてきていることから、少なくとも認知症の有病率は低下していると考えられます。


では、なぜ有病率が減少しているのでしょうか。


この研究では、教育期間の延長が認知症を予防しているのではないかと述べています。


日本においても、大学進学率はおおむね右肩上がりで、近年では50%を上回っています。これは50年前の約2倍の数値です。


ということは、将来的に日本においても認知症の有病率が低下する可能性があります。


ただし、日本の場合は非常に速い速度で高齢化が進行しているため、有病率が下がっても、認知症患者数は増加するのではないかと思います。


高学歴=認知症になりにくい


その反面


高学歴の人が認知症になると、進行が早い


ことも知られています。

Neurology October 23, 2007 vol. 69 no. 17 1657-1664)


高学歴の人は脳内の変化(萎縮など)が進行しても、なかなか症状として現れない反面、いざ症状が出現したときは、脳内の変化がかなり進行した状態となっています。そのため、高学歴でない認知症患者さんと比較し、いざ発症してしまうと進行が早いのではないかと考えられます。

久米医院

2016年1月21日 (木)

アルツハイマー病と喫煙

喫煙が健康に良くないということは、いまさら説明する必要のないことですが、認知機能にとっても良くないということが言われています。

かつて、喫煙はアルツハイマー病を予防するという論文が出されたこともあり、喫煙の数少ない利点だとされたこともありましたが、近年の研究では否定されています。

古い報告ですが(Lancet. 1998 Jun 20;351(9119):1840-3.)、これによると喫煙によってアルツハイマー病になるリスクは2倍程度になるといわれています。

また、喫煙は動脈硬化のリスクにもなるため、脳梗塞によって認知症になる危険性も増加するのではないかと思われます。

認知症予防のために、喫煙者の方は禁煙をお勧めします。


ただ、禁煙の成功率は低く、自力での成功率は10%を切るとも言われています(1年間の禁煙)。

現在は、保険診療で禁煙治療を受けることも可能ですので(当院でもできます)、禁煙補助薬を飲みながら禁煙する方が現実的かもしれません。

2015年9月11日 (金)

MRIでは認知症の発症予測はできない。

認知症を診断するために、頭部のMRIを行うことはほぼ必須であるといえます。

 

認知症の最大の原因であるアルツハイマー病患者さんでは、海馬の萎縮が目立つため、MRIで萎縮の有無を確認します。

 

脳血管性認知症であれば、脳梗塞があるため、これもMRIでよくわかります。

 

頭部MRIが、認知症を発症している患者さんにとって有用であることは、疑いの余地はないと思います。

 

では、発症予測という意味ではどうでしょうか。

 

フランスで行われた研究についてご紹介します。

 

1721人の認知症でない人にMRIを行い、さらに10年間追跡して、その間に認知症を発症したか調べた研究があります。

 

この研究では、認知症発症前のMRI画像を、統計的に解析しています。

 

アルツハイマー病でみられる海馬の萎縮についても検討されています。

 

しかし、残念ながら、認知症発症前に行われたMRIをもとに、10年のうちに認知症を発症するかどうかを予測することはできませんでした

 

Stephan, B. C. Tzourio, C. Auriacombe, S. et al. Usefulness of data from magnetic resonance imaging to improve prediction of dementia: population based cohort study. BMJ 2015;350:h2863

 

やっぱりそうだろうなというのが、率直な感想です。

 

アルツハイマー病に限って言えば、海馬の萎縮が目立つのは、認知症発症の時期とほぼ一致しているという印象です。

 

もし、発症を予測するのであれば、アミロイドβ(Aβ)を検出する検査の方が、おそらく有用であると思われます。
(アルツハイマー病の脳の変化は発症20年前から)

2015年8月 7日 (金)

アルツハイマー病の脳の変化は発症20年前から

認知症の原因の半数以上を占めるといわれるアルツハイマー病ですが、この病気は脳の中にアミロイドベータ(Aβ)という物質が蓄積することが原因の一つであるといわれています。

Aβは脳細胞を障害する作用があり、これによって脳細胞が変性し(神経原線維変化)、アルツハイマー病を発症すると考えられています。

このAβはアルツハイマー病発症の20年前頃より蓄積が始まるといわれています。

遅れること10年ほどで、神経原線維変化が始まるといわれています。

神経原線維変化が始まった後、アルツハイマー病の特徴である海馬の萎縮が始まり、認知機能の低下が徐々に認められます。

海馬萎縮が顕著になるころに、認知機能の低下が著しくなり、アルツハイマー病を発症します。


アルツハイマー病で病院を受診するのは、アルツハイマー病という病気が完成してからということになります。


現在、アルツハイマー病の治療薬として用いることのできる薬は、いずれも症状を緩和するもので、アルツハイマー病の原因を食い止めたり、改善したりするものではありません。

何とか進行を少しでも遅らせるための治療しかないということです。


これに対して、Aβに対するワクチンなどの研究がおこなわれており、アルツハイマー病を根本から治そうという試みはありますが、まだ実用化されてはいません。


どのようにしたらAβが蓄積しないようにできるのか、はっきりしたことは分かっていませんが、微小な炎症などがかかわっている可能性が示唆されています。

また、高齢者の認知症はアルツハイマー病単独ではなく、微小な脳梗塞を合併していることが多いため、一般的に生活習慣病を予防するための食生活が有効かもしれません。

アルツハイマー病になるリスクを少しでも下げたいとお考えであれば、50歳くらいから食事や運動に気を付ける必要があると考えられます。

2015年6月18日 (木)

シロスタゾール(プレタール)はアルツハイマー病を防げるか?

シロスタゾールという薬がアルツハイマー病の進行を抑制できるかもしれないという報告があります。

 

シロスタゾールは、もともと脳梗塞などの血管が詰まることによって起こる病気の予防薬です。

 

くすりの働くメカニズムは全く異なりますが、アスピリン(バイアスピリン)やクロピドグレル(プラビックス)などと使う目的は大体同じです。

 

では、なぜシロスタゾールがアルツハイマー病に効くかもしれないといわれているか。

 

シロスタゾールはアルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドベータ(Aβ)という蛋白の蓄積を防ぐ効果が、動物実験で示されていることがあげられます。

 

また、シロスタゾールを投与したアルツハイマー病患者の認知機能が、投与しなかった患者より低下しにくかったという報告もあります(Ihara M, Nishino M, Taguchi A et al.:Cilostazol add-on therapy in patients with mild dementia receiving donepezil: a retrospective study. PLoS One. 2014 Feb 26;9(2):e89516.)

 

では、どのくらい効くのか?

 

論文によると、MMSEが22~26点の軽いアルツハイマー病の患者さんにとっては、かなり効果的(80%進行を抑制)となっています。

 

しかし、21点以下では、効果は乏しかったとのことです(有効性を証明できていません)。

 

ただ、ちょっと気になるのが、この研究は、アルツハイマー病の患者さんを、ドネペジル(アリセプト)単独か、シロスタゾール併用の二つのグループに分けて追跡したわけではなく、振り返ってみたら、そうであったという研究だという点です。

 

ですから、もしかしたらシロスタゾールを使った理由が別にあって、その理由によって進行が遅くなった(シロスタゾールが効いたわけではない)ということもあり得るのです。

 

たとえば、シロスタゾール併用群は、実は脳梗塞合併の混合性認知症で、シロスタゾールによって脳梗塞の再発が抑えられたために、結果として認知機能が維持されたということも考えられます。

 

今後、さらなる研究が行われれば、本当にシロスタゾールがアルツハイマー病に効果があるのかがはっきりすると考えられます。

2015年6月12日 (金)

高脂血症治療薬(スタチン)は認知症に効くか?

スタチンという薬は、高脂血症(コレステロール異常症)にもっとも良く使われています。

古くはメバロチンから始まり、リピトール、クレストール、リバロなどの強力なものが現在主流となっています。

これらのスタチンという薬は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を強力に下げることができ、動脈硬化の抑制に効果的であることが分かっています。


最近、スタチンが認知症にも効果があるかもしれないといわれており、研究がおこなわれています。


現在までのところ、アルツハイマー病に対して進行抑制の効果が認められたという報告もありますが、最近ではスタチンはアルツハイマー病の進行抑制には役立たないのではと言われています(はっきりとした決着はついていません)。

しかし、動脈硬化のなれの果てである脳梗塞によって引き起こされる脳血管性認知症では、スタチンの投与によって発症や進行抑制効果が期待できると考えられます。


高齢者の認知症の多くは、純粋なアルツハイマー病ではなく、脳血管性認知症の要素が多分にあるため、スタチンを投与してLDLコレステロールをきちんと下げておくことは、認知機能の温存につながる可能性があると考えられます。


認知症の進行抑制のためには、アリセプトなどを内服するだけでなく、高脂血症などの生活習慣病の管理も大切というわけです。

2015年5月19日 (火)

ココナッツオイルは認知症にいいのか?

『ココナッツオイルが認知症にいい』という情報をしばしば耳にします。

ここでいう認知症はアルツハイマー病のことを指しているのですが、どうなのでしょうか。

結論から言うと、効くかどうか現時点で良く分かりません。

というのも、効果を裏付けるために必要な規模の研究がなされていないというのが、現実なようです(調べた範囲ではですが)。


いくつかの研究では、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸という成分が、体内でケトン体になり、これが脳細胞の栄養となるとか、ココナッツオイルの成分がアルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドベータの悪い作用を弱めるといったものがありました。

なので、一概に効果がないということもないと思われます。

ただし、劇的に効果があるというものではなさそうですし(劇的に効いたという1例報告はありましたが)、ココナッツオイルを摂取すればアルツハイマー病にならないということもないのではないかと思います。

ココナッツオイルを摂取するのは良いのですが、合併症(高血圧・糖尿病・コレステロール異常などの生活習慣病)を含めた治療をしっかりと受けたうえで、追加として行っていただきたいと思います。

もし、ココナッツオイルにきちんとした効果があったとしても、生活習慣病を放置していたら、きっと効果は弱まってしまうでしょう。

2015年5月18日 (月)

高血圧と認知症

高齢者の認知症は、いくつかの原因によって引き起こされていることが多いのですが、その中でも脳梗塞は大変重要な要素を占めています。

 

脳梗塞によって引き起こされる認知症を脳血管性認知症といいます。

 

脳梗塞には。麻痺を伴う大々的なものと、明らかな麻痺はないけれどじわじわ進行するもの(ビンスワンガータイプ)などがあります。

 

どちらでも認知症を起こしますが、じわじわ進行するタイプは一見アルツハイマー病に良く似ています

 

また、高齢者の場合、脳血管性認知症はアルツハイマー病とも合併しやすく、高齢者の認知症=アルツハイマー病+脳血管性認知症 となっていることも珍しくありません。

 

脳血管性認知症の原因となる脳梗塞は、長年にわたる血管へのダメージが原因と考えられています。

 

血管にダメージを与えるものはたくさんあり、例えば喫煙・高血圧・糖尿病・コレステロール異常などがあげられます。

 

その中でも高血圧はもっとも大きな原因と考えられています。

 

ですが、高血圧は現在、多種多様の薬があり、生活習慣の改善と薬物治療で血圧のコントロールは非常に行いやすくなっています。

 

血圧をしっかり管理することによって、将来認知症になる危険性を減らせると考えられています。

 

また、認知症患者さんに合併する高血圧を放置しておくと、認知機能の悪化が早くなるとも言われています。

 

ですから、高血圧は、脳梗塞や心筋梗塞だけではなく、認知症予防のためにも、若いうちからきちんと治療を行う必要があります。

 

血圧治療は年を取ってからも有効ですが、蓄積されたダメージが問題となるため、ダメージの少ない若いうちからきちんと治療を行うほうが効果が見込め、そうすることによって、将来認知症になり難くなると考えられます。

 

健康診断で血圧(やコレステロール・糖尿病)に異常のあった方、決して放置しないでくださいね。

 

血圧の基準はこちらを参照してください(高血圧学会

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